ジュニア・ウェルズ

ジュニア・ウェルズ（Junior Wells）は、本名をエイモス・ブレイクモアといい、1934年12月9日に生まれ、1998年1月15日にその生涯を閉じた、アメリカ合衆国の偉大なブルース・シンガーにしてハーモニカ奏者です。彼は1950年代からイリノイ州シカゴを拠点に活動し、その独特のファンキーなサウンドは、後のファンク・ブルースというスタイルを確立する上で重要な役割を果たしました。特に、ギタリストのバディ・ガイとの長年にわたるパートナーシップは、ブルース界で広く知られています。

ウェルズはテネシー州メンフィスで生を受けました。幼い頃からハーモニカに魅了され、リトル・ジュニア・パーカーから多大な影響を受けながらその技を磨きました。10代になる頃、彼はブルースの中心地の一つであるシカゴへと移り住みます。1950年代初頭、彼はデイヴ・マイヤーズ、ルイス・マイヤーズ、フレッド・ビロウといった腕利きたちと共にエイセズを結成し、活発な音楽活動を展開しました。1952年には、当時ブルース界の巨人であったマディ・ウォーターズのバンドに、リトル・ウォルターの後任として迎え入れられます。彼はエイセズでの活動とマディのバンドでの演奏を並行して行い、着実にその名を広げていきました。

50年代後半から60年代初頭にかけて、ウェルズはステイツやチーフといったレーベルで多くのレコーディングを残しました。1957年からはチーフのプロデューサー、メル・ロンドンから提供された楽曲を精力的に録音し、1960年には現在も彼の代表曲として愛される「Messin' With The Kid」を発表しています。

彼のキャリアにおける特筆すべき転換点の一つが、1965年にデルマーク・レコードからリリースされたアルバム『Hoodoo Man Blues』です。この作品には旧知の仲であるバディ・ガイがギタリストとして参加しており、シカゴ・ブルースを代表する歴史的な名盤として高く評価されています。このアルバムをきっかけに、ウェルズとガイはデュオとしての活動をより頻繁に行うようになります。1969年には、デュオ名義のアルバム『Buddy and the Juniors』を発表しました。一方、ソロとしてもブルー・ロックやヴァンガードといったレーベルから立て続けにアルバムをリリース。この時期から、彼のサウンドは以前にも増してファンキーな色合いを帯びるようになり、そのグルーヴはしばしばジェイムズ・ブラウンと比較されるほどでした。

1970年代に入ると、彼は再びデルマークから『South Side Blues Jam』（1970年）や『On Tap』（1975年）といったアルバムを発表します。また、バディ・ガイとのデュオとしての活動も精力的に続けられ、1970年にはローリング・ストーンズのツアーのオープニングアクトを務めました。同年10月には、エリック・クラプトンらとのセッションを行い、その録音は1972年にアトコ・レコードから『Buddy Guy & Junior Wells Play the Blues』としてリリースされ、話題となりました。ウェルズはガイと共に、1975年3月の「第2回ブルース・フェスティバル」で初めて日本のファンにその演奏を披露しました。その後も、1987年のジャパン・ブルース・カーニバルでガイと、1992年の同カーニバルおよび1997年のブルーノート公演ではソロとして、幾度か日本の地を踏んでいます。

1980年代以降は新作の発表ペースは落ち着きましたが、1990年代にはテラークと契約し、4枚のアルバムを世に送り出しました。また、1990年にはキャリー・ベル、ジェイムズ・コットン、ビリー・ブランチといった同世代のハーモニカ奏者たちとの共演盤『Harp Attack!』に参加し、その健在ぶりを示しました。

晩年には、1998年公開の映画『ブルース・ブラザース2000』に出演し、パワフルな演奏を披露しました。しかし、この映画の撮影を終えて間もない1997年8月、ガンであることが判明します。同年10月には、ローリング・ストーンズのトリビュート盤『Paint It Blue: Songs of the Rolling Stones』で「(I Can't Get No) Satisfaction」を歌い、最後の録音の一つとなりました。1997年秋には昏睡状態に陥り、回復することなく、1998年1月15日に波乱に満ちた生涯を閉じました。ジュニア・ウェルズは、その感情豊かな歌声と、力強くも洗練されたハーモニカ演奏で、シカゴ・ブルースの歴史に深くその名を刻んでいます。

もう一度検索