ジュリー＝ヴィクトワール・ドービエ

ジュリー＝ヴィクトワール・ドービエ：フランス女性解放運動の先駆者

ジュリー＝ヴィクトワール・ドービエ（1824年3月26日 - 1874年8月26日）は、19世紀フランスにおける女性解放運動の重要な推進者でした。著述家として、また女子教育の普及を目指す活動家として、社会における女性の地位向上に尽力しました。彼女は、フランス人女性として初めてバカロレアを取得し、その後、ソルボンヌ大学で学士号を取得するという偉業を成し遂げました。

生い立ちと教育

1824年、ドービエはフランス北東部のヴォージュ県バン＝レ＝バンで生まれました。父親は王立工場の会計担当であり、幼少期は比較的安定した環境で過ごしましたが、父親の死後、一家は転居を余儀なくされました。ドービエは、小学校教員免許に相当する上級初等教育修了証書を取得し、当時の女性が到達できる最高の教育を受けました。しかし、彼女の向学心はそこで止まることなく、司祭であった兄の指導のもと、ラテン語、ギリシャ語、歴史、地理、ドイツ語などを独学で学びました。その後、家庭教師として働きながら、社会制度を批判する書物を読み、執筆活動にも関心を持つようになりました。

社会改革運動への参加

1850年代にパリに移り住んだドービエは、国立自然史博物館で動物学を学ぶ傍ら、経済学と法学を修めました。1859年、リヨン科学文芸アカデミーの懸賞論文で「ある貧困女性が描く貧困女性」と題する論文が最優秀賞を受賞しました。この論文でドービエは、女性の貧困や社会における女性の地位・役割について歴史的に考察し、ブルジョワ道徳の偽善を批判しました。結婚が遺産相続の手段と化している現状や、内縁関係が女性を貧困に陥れる状況を指摘し、男女間の対等なパートナーシップの必要性を訴えました。また、ナポレオン法典が女性蔑視に基づいていると批判し、女性参政権の必要性を強く主張しました。この論文は後に『19世紀の貧困女性』として出版され、ドービエの名声を高めました。

バカロレア取得への挑戦

ドービエは、男女同権を実現するためには教育が不可欠であると考え、バカロレア受験を志しました。しかし、当時のフランスでは、女性がバカロレアを受験すること自体が前例のないことであり、大学側は当初、彼女の申請を拒否しました。それでもドービエは諦めず、フランシスク・ブイエなどの支援を得て、1861年にフランス人女性として初めてバカロレアを取得しました。この偉業は、女性の社会進出を大きく後押しするものとなりました。

女性解放運動の推進

バカロレア取得後も、ドービエは女性の権利擁護のために活動を続けました。ソルボンヌ大学への入学を認められるよう運動を展開し、1871年にはフランス人女性として初めて学士号を取得しました。同年、「段階的女性解放協会」を設立し、女性の教育機会の拡大や参政権の獲得を目指しました。彼女は、ジョルジュ・サンド、エリザ・ルモニエ、ローザ・ボヌールなど、他の女性解放運動家たちとも交流を深め、互いに協力しながら活動を進めました。

その死と遺産

1874年、ドービエは結核のため50歳で亡くなりました。しかし、彼女の功績は決して忘れられることなく、その名前は、学校や通り、広場などに冠され、後世に語り継がれています。ドービエは、フランスにおける女性解放運動の先駆者として、多くの女性たちに勇気と希望を与え続けました。

彼女の著書や論文は、現代においても、女性の権利やジェンダー平等について考える上で重要な資料となっています。また、彼女が設立した「段階的女性解放協会」の活動は、その後のフェミニズム運動に大きな影響を与えました。ジュリー＝ヴィクトワール・ドービエは、まさに、フランス女性解放運動の歴史における象徴的な存在と言えるでしょう。

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