ジョアンヴィル＝ル＝ポン

ジョアンヴィル＝ル＝ポン（Joinville-le-Pont）は、フランスの首都パリ近郊、イル＝ド＝フランス地域圏ヴァル＝ド＝マルヌ県に位置するコミューンです。マルヌ川沿いに広がる緑豊かな地域であり、歴史的に重要な交通の要衝として、また近現代にはパリ市民の憩いの場として栄えてきました。

地理

コミューンはマルヌ川によって東西に大きく分けられており、川下側はバ・ド・ジョアンヴィル（Bas de Joinville）、川上側はオー・ド・ジョアンヴィル（Haut de Joinville）と呼ばれています。川の中州であるファナック島やサン・ペール島なども、ジョアンヴィル＝ル＝ポンの領域に含まれます。地理的な特徴として、コミューン内を東西にフランスの主要高速道路であるA4号線が横断しています。また、マルヌ川とファナック島を結ぶ歴史的なジョアンヴィル橋は、現在のイル＝ド＝フランス地域圏の都市高速鉄道であるRER A線のルート上にもあり、ジョアンヴィル＝ル＝ポン駅が設置されています。周辺はノジャン＝シュル＝マルヌ、シャンピニー＝シュル＝マルヌ、サン＝モール＝デ＝フォッセ、メゾン＝アルフォール、サン＝モーリスといったコミューンに隣接しており、西側は広大なヴァンセンヌの森を通じてパリ市と接しています。

歴史

ジョアンヴィル＝ル＝ポンの地は、かつては隣接するサン＝モール＝デ＝フォッセの一部でした。フランス革命期、独立した自治体としての道を歩み始め、当初は「ラ・ブランシュ＝デュ＝ポン＝サン＝モール（サン＝モール橋の枝）」と名付けられました。現在の名称となったのは1831年のことです。当時のフランス国王ルイ・フィリップの王子であったジョアンヴィル公フランソワにちなんで「ジョアンヴィル」と改称され、さらにオート＝マルヌ県に同名の地があることから、区別のため「橋」を意味する「ル＝ポン」が付加され、ジョアンヴィル＝ル＝ポンとなりました。

この地に初めて橋が架けられたのは1205年のオラン橋とされ、その目的は主に軍事的なものでした。以来、マルヌ川を渡るこの橋は軍事的な要衝となり、歴史上の様々な争乱の舞台となりました。1590年にはアンリ4世（当時はアンリ・ド・ナヴァール）が兵を配置し、17世紀半ばにはフロンドの乱などで破壊されるなど、橋の重要性がうかがえます。

独立したコミューンは1790年に正式に発足しました。ボニファス・ド・ミラボー子爵らの働きかけもあり、木材商人のエドム・ルルーに率いられた住民たちは新たな自治体を立ち上げ、ルルーが初代市長に就任しました。当時の住民数は1793年時点で403人でした。

1870年の普仏戦争では、パリ攻城戦の最中に首都機能の一部がこの地に移転するという出来事がありました。また、隣接するシャンピニーで起こった激戦（シャンピニーの戦い）では、プーランジュ城が戦略的な要所となり、ジョアンヴィルを含む一帯で仏独両軍が衝突。フランス軍は一時、ジョアンヴィル橋を戦略的に破壊しました。

19世紀後半に入ると、ジョアンヴィル＝ル＝ポンは新たな側面を見せ始めます。マルヌ川沿いにギャンゲットと呼ばれる庶民的な飲食店やダンスホールが多数登場し、パリ市民の週末の行楽地として大変な賑わいを見せました。当時の鉄道（現在のRER線）を利用して、多くのパリジャンが土曜日の休暇を過ごすためにこの地を訪れ、川沿いには週末用の別荘も建てられました。この時代の活気あふれる様子は、エミール・ゾラの『ボヌール・デ・ダム百貨店』などの著名な文学作品にも描かれています。現在でも「シェ・ジェジェーヌ」をはじめとするいくつかのギャンゲットが観光シーズンなどに営業しており、当時の雰囲気を今に伝えています。

第一次世界大戦中には、カナダ人病院が設置されました。また、1921年にはフランスの主要映画会社であるパテが大規模な映画撮影所を設立し、多くの作品がここで制作されました。この撮影所は経営上の困難なども経ながらも、1987年まで稼働を続けました。1929年には、隣接する広大なヴァンセンヌの森全体がパリ市に統合されたことにより、ジョアンヴィル＝ル＝ポンは森に含まれるヴァンセンヌ競馬場や国立スポーツ研究所（INSEP）などの重要な施設の一部をその行政区域から失いました。1971年には、A4高速道路の建設のため、マルヌ川沿いとポランジ地区にあった約130軒の住宅が立ち退きを余儀なくされました。

経済

現在のジョアンヴィル＝ル＝ポンには、製造業を中心とした企業が立地しています。主なものとしては、カルティエ・グループ傘下のリュグジュリ・アイウェアによる眼鏡やサングラスの製造、眼鏡レンズメーカーとして知られるエシロール社の子会社などがあります。

姉妹都市

海外の複数の都市と姉妹都市提携を結んでいます。
ベルギッシュ・グラートバッハ（ドイツ）
ラニーミード（イギリス）
* バターリャ（ポルトガル）

ジョアンヴィル＝ル＝ポンは、マルヌ川が織りなす自然景観と、橋を巡る歴史、そしてギャンゲット文化に代表される近現代の賑わいを併せ持つ、多様な魅力を持つコミューンと言えます。

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