ジョセフ・R・シーツ

ジョセフ・ロバート・シーツ（Josef Robert Sheetz、1895年11月20日 - 1992年1月28日）は、アメリカ合衆国の陸軍軍人であり、第二次世界大戦とアメリカによる沖縄統治時代において重要な役割を果たしました。特に、1949年から1950年にかけて琉球列島米国軍政府の軍政長官を務めた際、その施政は「シーツ善政」として知られ、沖縄の戦後復興を大きく進展させました。

経歴

シーツは、1939年から1941年までアメリカ陸軍指揮幕僚大学で教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。1941年に太平洋戦争が勃発すると、陸軍省副参謀長に転任し、軍の中枢で活躍しました。1944年には陸軍准将に昇進し、第二十四軍団砲兵指揮官として部隊を率い、1945年には沖縄戦の激戦地へと赴任し、その部隊を指揮しました。

終戦後、シーツは韓国に転任しましたが、1949年10月にウィリアム・イーグルスの後任として琉球軍司令官兼琉球列島米国軍政府の軍政長官として沖縄に戻りました。当時、沖縄は終戦から4年が経過していたものの、経済や治安は依然として混乱しており、米軍の軍紀も緩んでいる状況でした。シーツは、このような状況下で、経済復興、政治体制の確立、治安改善などの復興策に組織的に取り組みました。彼は、占領後初の軍政長官として、那覇市街地の首都としての再建、琉球・奄美・宮古・群島民政府の設立、そしてその知事や議員の公選を実現しました。また、米軍部隊の再編成や待遇改善、綱紀粛正などにも取り組みました。これらの施策は、当時の沖縄住民から「シーツ善政」と高く評価されました。

このような占領政策の転換は、当時の国際情勢、特に中華人民共和国の成立や朝鮮戦争勃発直前の緊張した状況を背景としていました。アメリカは、沖縄を軍事基地として戦略的に重要視するようになり、それまでの単なる軍事占領から恒久的な統治へと方針を転換しました。しかし、シーツ自身の資質もまた、「善政」という評価を形作る上で重要な要素でした。彼は地元の小中学生と積極的に交流するなど、住民との距離を縮める努力を惜しみませんでした。

しかし、シーツの「善政」は長くは続きませんでした。1950年末、彼は病を得て退役を余儀なくされ、その施政は一年余りで幕を閉じました。その後、朝鮮戦争の膠着化や東西冷戦の深刻化などを背景に、沖縄を除く本土のみを独立させるサンフランシスコ講和条約が締結されました。また、主席任命制が復活する琉球政府への再編、アメリカ軍による強制的な土地収用など、島民の期待を裏切る出来事が相次ぎ、沖縄における反米感情は再び高まることになりました。

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