ジョッフル級航空母艦

ジョッフル級航空母艦：フランス海軍の悲運の空母計画

1935年、イギリスとドイツ間の英独海軍協定は、フランス海軍に衝撃を与えました。この協定によりドイツ海軍は新たな航空母艦建造を認められ、フランス海軍は、第一次世界大戦後に戦艦を改造した『ベアルン』一隻しか保有していなかったため、ドイツとの対抗上、航空母艦の建造を急務としました。

この危機感から、フランス海軍は1937年に10年ぶりに航空母艦建造計画を立案し、1938年には基準排水量1万8000トン級の航空母艦3隻の建造を開始します。これが、ジョッフル級航空母艦です。建造はサン・ナゼールのベンホーエ造船所で進められましたが、1939年9月の第二次世界大戦勃発により、建造は遅延しました。そして、1940年6月のフランス敗戦によって、建造は中断されました。

ジョッフル級の1番艦『ジョッフル』は、建造率わずか20%で解体され、2番艦『パンルヴェ』は起工すらされませんでした。結果、フランス海軍は戦時中、『ベアルン』以外の国産空母を運用することはありませんでした。戦後も、フランス海軍の空母は他国から購入した旧式艦艇が中心で、国産新造空母の運用開始は1960年代のクレマンソー級まで待つこととなりました。

艦形と設計

ジョッフル級の船体形状は、従来の戦艦を改造した空母とは異なり、フランス近代巡洋艦のようなスマートな船体設計が特徴です。中央楼型船体を採用し、艦首甲板から航空機格納庫がせり上がる構造でした。格納庫の右舷部には航空機搭載用のクレーンが設置され、飛行甲板へと繋がっていました。

飛行甲板の右舷側には、艦橋構造と一体化した煙突が配置され、その前後には「1932年型13cm(45口径)両用砲」を連装砲塔で計4基装備。さらに、「1933年型37mm(50口径)機関砲」を連装砲架で4基配置する予定でした。飛行甲板は右舷寄りの上部構造物のため、左舷側に約5m張り出していました。イギリスの航空母艦に見られるようなT字型のエレベーターを前後に1基ずつ、計2基装備し、後部には水上機運用のためのクレーンが備えられていました。

武装

主砲には「ダンケルク級戦艦」の副砲にも使用された「1932年型13cm(45口径)砲」を採用。軽量な装甲を施した砲塔構造で、対水上・対空両用として使用できる先進的な砲でした。俯角-5度から仰角75度まで砲身を自由に動かすことができ、どの角度でも装填可能で、発射速度は毎分10～12発でした。副砲として「1933年型37mm(50口径)機関砲」4基と「1929年型13.2mm(50口径)機銃」6基を装備する予定でした。

機関

機関は、当時のフランス海軍艦艇で広く採用されていたインドル式重油専焼缶8基とパーソンズ式ギヤードタービンを組み合わせ、最大出力125,000馬力、速力33ノットを予定していました。計画航続性能は20ノットで7,800海里、33ノットで3,000海里とされていました。

結論

ジョッフル級航空母艦は、国際情勢の変化と戦争の勃発という不運に見舞われ、計画の途中で頓挫した、フランス海軍の悲劇と言える存在です。もしも完成していたら、フランス海軍の海洋戦略にどのような影響を与えたのか想像するだけで興味深いものです。しかし、その完成を見ることなく消えたジョッフル級航空母艦は、フランス海軍史において、忘れ去られることのない重要な艦艇と言えるでしょう。

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