ジョリ・ブラガ・サントス

ジョリ・ブラガ・サントス

ジョリ・ブラガ・サントス（Joly Braga Santos, 1924年5月14日 - 1988年7月18日）は、ポルトガルの首都リスボンに生まれ、20世紀後半の同国を代表する作曲家の一人としてその名を馳せました。彼の創作は、主に管弦楽曲、オペラ、協奏曲といった分野に及びますが、特に全生涯を通じて手がけた交響曲は、彼の音楽家としての歩みと作風の変遷を理解する上で極めて重要な位置を占めています。

主要作品と様式

ブラガ・サントス氏の創作活動において、最も重要な位置を占めるのは、彼が生涯に作曲した全6曲の交響曲群でしょう。これらの交響曲は、彼の音楽スタイルの変遷を如実に示しています。

初期に作曲された第1番から第4番までの4曲は、19世紀後半から20世紀初頭にかけてヨーロッパで隆盛を極めた後期ロマン派音楽の伝統に深く根ざしたスタイルで書かれています。これらの作品には、壮大でドラマティックな展開、豊かなオーケストレーション、そして叙情的な旋律が特徴として見られます。彼はこの段階では、既存のヨーロッパ音楽の伝統的な書法に忠実でした。

しかし、1960年代に入ると、ブラガ・サントス氏の音楽スタイルは大きな転換期を迎えます。この時期以降に作曲された最後の2曲、すなわち第5番と第6番の交響曲では、それまでの後期ロマン派的な伝統的手法から意図的に距離を置くようになります。特に顕著なのは、伝統的な調性システムからの逸脱を試みる半音階主義の積極的な導入と、自身の祖国ポルトガルの豊かな音楽遺産である民族音楽のエッセンスを作品に取り入れた点です。これにより、彼の音楽はより個性的で、同時代の前衛的な動きとは異なる独自の方向性を示しました。

彼の交響曲は、ポルトガルの作曲家による重要なレパートリーとして位置づけられています。

作風の全体像

ブラガ・サントス氏の音楽全体を俯瞰すると、彼は同時代の最先端を行く現代音楽の潮流よりも、より伝統的な近代音楽の様式に強く根差していました。前衛的な実験音楽や無調、十二音技法といった手法に全面的に傾倒するのではなく、彼自身の音楽語法は、調性や旋律性を重視しつつ、時代の変化を取り入れて発展していったと言えます。

その他の作品

交響曲以外にも、彼の創作活動は多岐にわたります。

管弦楽曲: きらびやかな響きを持つ「スタッカート・ブリランテ」などが挙げられます。
オペラ: 3つの舞台作品を作曲しています。
協奏曲: 独奏楽器と管弦楽のための協奏曲も4曲残しています。これらは以下の楽器のために書かれました。
ヴィオラのための協奏曲
ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
ピアノのための協奏曲
* チェロのための協奏曲

これらの多様な作品群は、彼のオーケストレーションの手腕と楽器への深い理解を示しています。

ジョリ・ブラガ・サントスは、ポルトガル音楽史において、伝統と革新のバランスを取りながら独自の音楽世界を築き上げた作曲家として、今なお高く評価されています。

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