ジョンソン郡 (ケンタッキー州)

ジョンソン郡の概要

ジョンソン郡は、ケンタッキー州東部に位置する郡で、郡庁所在地はペインツビル市です。2010年の国勢調査では人口23,356人を数え、2000年の34,445人からわずかに減少しています。1843年に設立され、郡名は米英戦争の英雄で政治家でもあったリチャード・メンター・ジョンソンに由来します。

この地域は、アルコール飲料の販売に関して「モイスト郡」に分類されます。郡内では原則としてアルコール販売が禁止されているものの、ペインツビル市のように販売が認められている「ウェット」な地域も存在します。

歴史

郡の設立

ジョンソン郡は、1843年にフロイド郡から分離して設立されました。郡庁所在地のペインツビル市は、その9年前には既に認定都市となっていました。1810年代には家屋が建てられ始めており、初期の住民の多くはスコットランド、アイルランド、イングランド、ドイツからの移民の子孫でした。

独立戦争後にノースカロライナ州、ペンシルベニア州、バージニア州から移住してきた人々が多かったようです。
設立から約25年間、ジョンソン郡とペインツビル市は困難な時代を経験しました。道路やハイウェイが未整備で、郵便や物資は馬や蒸気船で運ばれていました。後に駅馬車が利用されるようになり、州東部とブルーグラス地域との間を結ぶようになりました。

南北戦争時代

1860年、ジョンソン郡とペインツビル市が発展し始めた頃、南北戦争が勃発しました。境界地域に位置したため、兄弟が敵対し、家族が分断される悲劇が起きました。郡内では、南北どちらにもつかないという条例が出されましたが、ミドルクリークの戦いで北軍が勝利した後、この条例は撤廃されました。

ジョン・C・C・メイヨー

南北戦争終結後、ペインツビルに移住してきたトマス・ジェファーソン・メイヨーは、教師として才能を発揮しました。彼の息子であるジョン・C・C・メイヨーは、東部ケンタッキー州の発展に大きな影響を与えた人物です。

メイヨーは、銀行、教会、公共事業、鉄道輸送を推進し、地域の発展に貢献しました。一方で、石炭産業の発展を主導したことで、地域経済の低迷を招いたという批判もあります。彼は、石炭産業の発展が遅れていた東部ケンタッキー州に資金を呼び込み、鉄道を敷設することに貢献しました。しかし、その過程で、多くの住民が土地の権利を不当に奪われる事件も発生しました。

1904年、チェサピーク・アンド・オハイオ鉄道がペインツビルまで開通しました。これは、鉄道を敷設するために25年間努力した結果でした。メイヨーは政治活動も行い、民主党全国委員会で東部ケンタッキー州唯一のメンバーになり、ケンタッキー州知事やアメリカ合衆国下院議員の選出にも影響力を行使しました。

メイヨーは1914年に病気で亡くなりましたが、彼の邸宅「メイヨー・マンション」は現在もペインツビルに残っています。

地理

アメリカ合衆国国勢調査局によると、郡の総面積は264平方マイル（684平方キロメートル）で、そのうち陸地が262平方マイル（679平方キロメートル）、水域が2平方マイル（5.2平方キロメートル）です。水域率は0.91％です。

郡内最高地点はスタフリー・ノブ（標高1,496フィート/456メートル）、最低地点はローレンス郡との境界（標高約550フィート/168メートル）です。

交通

主要な高規格道路には、アメリカ国道23号線、460号線、ケンタッキー州道40号線、321号線、3号線などがあります。
公共交通機関としては、サンディバレー交通が郡内全般の輸送サービスを提供しており、フロイド郡、マーティン郡、マゴフィン郡、パイク郡と繋がっています。

空港としては、ペインツビル市の南西4カイリ（7キロメートル）にペインツビル・プレストンバーグ・コームズ飛行場があります。

隣接する郡

北にローレンス郡、東にマーティン郡、南にフロイド郡、南西にマゴフィン郡、北西にモーガン郡が隣接しています。

教育

ジョンソン郡には2つの教育学区があります。ジョンソン郡教育学区は郡全体の学校を運営しており、ペインツビル独立教育学区はペインツビル市内の学校を運営しています。

ジョンソン中央高校は学業と運動の両方で高い評価を得ており、USニューズ&ワールド・レポートでもアメリカの高校のトップに挙げられ、銅賞を受賞しました。

郡内には、アワーレディ・オブ・マウンテン学校とジョンソン郡クリスチャン学校という2つの私立学校もあります。

また、ビッグサンディ・コミュニティ工科カレッジが2つのキャンパスを運営しており、ミッドウェイ薬科カレッジも授業を行っています。

見どころ

ケンタッキー・リンゴ祭り

1914年に最初の郡祭が開催され、1962年からは毎年ケンタッキー・リンゴ祭りが開催されています。祭りの期間中は、ペインツビル市の中心街の通りが歩行者天国となり、ライブ音楽や様々なイベントが催されます。

公園とレクリエーション

ペインツビル湖州立公園には、湖、山火事管理地域、マリーナ、ボート・ドック、レストラン、コンビニエンスストア、キャンプ場などがあります。

ペインツビル・レクリエーション施設には、バスケットボールコート、遊具、バレーボールコートがあります。

ペインツビル・カントリークラブとゴルフコースは、東部ケンタッキー州最古のゴルフコースで、アメリカ合衆国国家歴史登録財に指定されています。

博物館

アメリカ国道23号線カントリー・ミュージック・ハイウェイ博物館では、カントリーミュージックのスター達について展示しています。

炭鉱夫の博物館では、地域の石炭産業の歴史を伝えています。

歴史的な場所

メイヨー・マンションは、ジョン・C・C・メイヨーが建設した邸宅で、現在は学校として利用されています。

メイヨー記念ユナイテッド・メソジスト教会は、メイヨーが建設した教会で、アンドリュー・カーネギーが寄贈したオルガンがあります。

ジェニー・ワイリーの墓所は、インディアンに捕らえられた後、逃れてジョンソン郡で生涯を終えたジェニー・ワイリーが眠る場所です。

ロレッタ・リンとクリスタル・ゲイルの生家は、カントリーミュージックのスターである二人が育った場所です。

フォレスト・アンド・マキシー・プレストン記念橋は、世界最長のプラスチック製歩行者用吊り橋です。

マウンテンホームプレースは、19世紀半ばの東部ケンタッキー州の農村を再現した場所です。

著名な出身者

ロレッタ・リン（カントリーミュージック歌手）
クリスタル・ゲイル（カントリーミュージック歌手、ロレッタ・リンの妹）

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