ジョンソンM1941軽機関銃

ジョンソンM1941軽機関銃：革新的な設計と不遇な運命

ジョンソンM1941軽機関銃は、第二次世界大戦中にアメリカで開発された軽機関銃です。設計者のメルヴィン・ジョンソンは、当時主流だったM1ガーランド小銃に不満を抱き、より優れた小銃と、その派生型として軽機関銃を開発しました。しかし、その革新的な設計にもかかわらず、アメリカ軍の制式採用には至らず、一部部隊での限定的な運用に留まりました。

特徴

ジョンソンM1941は、当時の軽機関銃としては比較的軽量で、弾帯給弾機構を持たないという点で異彩を放っていました。アメリカ軍では、ブローニングM1918自動小銃と同等の自動小銃として扱われました。設計者であるジョンソン自身も、軽機関銃ではなく自動小銃、あるいは「軽機関小銃」と呼ぶことを好みました。これは、必要に応じて小銃のように構えて射撃できる点を強調するためでした。

初期モデルには、ジョンソン小銃と同じく着剣ラグがあり、銃剣を装着可能でした。セレクティブファイア機能を備え、セミオート射撃時にはクローズドボルト、フルオート射撃時にはオープンボルトの状態から発射されました。このため、セミオートからフルオートに切り替える際には、手動でボルトを後退させる必要があり、薬室内の弾薬が1発無駄になるという欠点がありました。しかし、銃身交換は非常に容易で、マニュアルによればわずか5〜6秒で交換可能でした。

直銃床レイアウトのため照準器の位置は比較的高く、二脚は着脱可能でした。銃身交換時には二脚を取り外す必要がありました。左側面から装填する20連発箱型弾倉も独特の設計で、マガジンリップは機関部側にあり、弾倉側にはありませんでした。弾倉のストッパーが弾薬を固定する役割も兼ねていました。

機関部には、ジョンソン小銃と同じロータリー型弾倉が組み込まれており、クリップで追加装填も可能でした。これにより、銃内部に25発の弾薬を保持できました。しかし、弾倉は単列式で長くてかさばり、破損しやすいという欠点もありました。ロータリー型弾倉は、ブローニングM1918の弾倉を使用した試験で、兵士が弾薬を逆に装填して弾倉を破損させた事件がきっかけで、同様の「不正」を防ぐために考案されたものでした。

歴史

弁護士であり予備役海兵大尉でもあったメルヴィン・ジョンソンは、当時次期主力小銃の候補だったM1ガーランドに否定的な評価を下していました。彼は、信頼性や射撃精度に優れ、量産にも適した小銃の設計に着手し、1935年に最初の試作品を完成させました。その後、一連の銃器設計に関する特許を取得しました。

ジョンソンは、自身の設計した小銃を軍部に採用させようと働きかけましたが、陸軍は既にM1ガーランドを採用しており、部品調達などの兵站上の理由から、ジョンソンの設計は採用されませんでした。ジョンソンは、小銃と並行して軽機関銃の設計も行っており、小銃と共通の機構や部品を多く採用し、同じ設備で容易に製造できることを目指しました。

ジョンソン軽機関銃は、ブローニングM1918よりも軽量で、銃身交換が容易という利点がありましたが、結局、制式採用には至りませんでした。しかし、オランダ購買委員会が興味を示し、オランダ領東インド陸軍向けの近代的な火器として購入されました。ジョンソン社は製造設備を持っていなかったため、クランストンの繊維工場を買収し、クランストン・アームズ社を設立して製造にあたりましたが、日本軍の侵攻により、現地に届いたジョンソン軽機関銃はごくわずかでした。

その後、M1944として知られる改良型が発表されました。機関部の再設計や、木製部品を廃止した金属パイプ製銃床やプラスチック製グリップの採用、一体型の短脚の採用などが行われました。射撃速度も変更可能で、騎兵や空挺部隊向けのオプションとして、短銃身も設計されました。M1944は、アメリカ海兵隊で高く評価されましたが、陸軍の採用は見送られ、制式採用には至りませんでした。その後も改良が続けられ、M1944E1、後にM1945へと発展しましたが、第二次世界大戦の終結とともに、プロジェクトは終了しました。

戦後、陸軍武器省ではM1918とM1919A6の役割を統合した銃器の開発が試みられ、M1945の設計は、その要件に非常に近いものでした。弾帯給弾への変換を可能とした試作品も開発されましたが、終戦の影響とジョンソン社の財政問題により、全てが放棄されました。1950年代には、イスラエルでM1944を原型とするドロール軽機関銃が開発されました。

運用

アメリカ海兵隊では、落下傘部隊（パラマリーンズ）向けの装備として、ジョンソン軽機関銃が注目され、比較的少数が調達されました。また、特殊部隊マリーン・レイダーズや、米加軍合同特殊部隊である悪魔の旅団でも使用されました。戦略情報局（OSS）でも、分解して隠匿しやすいという理由から少数使用されました。

第二次世界大戦後には、キューバ革命でカストロ率いるゲリラが使用し、その後、反共キューバ人部隊も抵抗のために使用するなど、皮肉な運命を辿りました。実戦では、高い精度や銃身交換の容易さが評価されましたが、照準器の高さや側面弾倉がジャングルで邪魔になることが問題点として指摘されました。

試作カービン

蘭印陸軍の兵士のために、ジョンソン・オートカービンという小型のカービン銃が試作されました。これは、ジョンソン軽機関銃の給弾機構をジョンソン小銃と同じ固定式ロータリー型弾倉に変更したもので、軽量化のために小改良が加えられました。軽機関銃用の銃身がそのまま取り付けられており、高い射撃精度を誇りました。しかし、部品の多くは専用設計で、軽機関銃や小銃との互換性はありませんでした。

オートカービンを高く評価した海兵隊中尉ハリー・L・トーガソンは、試作銃を実際に射撃し、その性能に感銘を受けました。彼は、最終的に試作銃を持ち出すことを許され、ブーゲンビル島の野営地などで使用した写真が残っています。オートカービンの現存品は、製造番号S-5の試作銃のみです。

1946年には、アルゼンチンからの要望に基づき、M1947というカービン銃が試作されましたが、詳細は不明です。M1947の追加製造は行われず、1949年にジョンソン社は破産しました。

まとめ

ジョンソンM1941軽機関銃は、その革新的な設計と優れた性能にもかかわらず、アメリカ軍の制式採用には至りませんでしたが、その後の改良型や派生モデルを含め、その影響は決して小さくありませんでした。独特の給弾機構や、セレクティブファイア機能、銃身交換の容易さなど、多くの点で当時の銃器開発において先進的なものでした。その歴史は、革新的なアイデアが必ずしも成功に結びつかないという、銃器開発の難しさを物語っていると言えるでしょう。

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