ジョン・クロウ・ランサム

ジョン・クロウ・ランサム(1888年-1974年)は、20世紀アメリカ文学史において重要な役割を果たした詩人、批評家です。テネシー州の生まれで、バンダービルト大学とオックスフォード大学で学びました。

バンダービルト大学では1914年から1937年まで英文学を教授。この間、彼はアレン・テート、ロバート・ペン・ウォーレンらと共に、南部文芸復興運動の中核を担う「フューデジィブ」グループを結成しました。このグループは、伝統的な南部の価値観と近代社会の狭間で葛藤する南部のアイデンティティを探求し、新しい文学表現を模索しました。

ランサム自身も詩人として活動し、洗練された技巧と鋭い知性を感じさせる作品を発表しました。彼の詩は、ロマン主義的な奔放さとは対照的に、抑制された表現と精密な構成によって特徴づけられます。1922年から1925年にかけては、彼らが中心となって文学雑誌『逃亡者(The Fugitives)』を発行。この雑誌は、当時アメリカ南部で台頭しつつあった新しい文学運動の重要なプラットフォームとなりました。しかし、ランサム自身の詩作活動は1925年頃を境に終焉を迎えます。

その後、ランサムはケニオン大学に移り、英文科教授として教鞭を執り始めます。そこで彼は、反ロマン主義的な文芸批評理論であるニュー・クリティシズムの基礎を築きました。ニュー・クリティシズムは、テキストそのものの細部への緻密な分析に基づいて文学作品を解釈する手法で、後のアメリカ文学批評に大きな影響を与えました。

1939年には、アメリカを代表する文学季刊誌となる『ケニオン・レビュー』を創刊しました。編集者として21年間務めたランサムは、アレン・テート、ロバート・ペン・ウォーレン、ウィリアム・エンプソンといったすでに著名な作家から、フラナリー・オコナーやロバート・ローウェルといった当時新進気鋭の作家まで、幅広い作品を紹介しました。この雑誌は、1940年代から1950年代にかけて英語圏で最も影響力のある文学誌となり、多くの作家や批評家を育成しました。

ランサムの批評は、綿密なテキスト分析と、鋭い洞察に満ちていました。彼は、単なる作品解釈にとどまらず、文学と社会、文学と人生との複雑な関係を鋭くえぐり出しました。彼の作品は、現在でも高い評価を受け、多くの研究者によって読み継がれています。

ランサムの業績を語る上で、1964年にSelected Poemsで受賞した全米図書賞は特筆すべきでしょう。これは彼の詩作における卓越した功績を物語るだけでなく、アメリカ文学史における彼の位置づけを明確に示すものです。晩年のランサムは、詩人、批評家、教育者としての多面的な才能によって、20世紀アメリカ文学に不滅の足跡を残しました。彼の影響は、現代の文学研究や批評にも色濃く残っており、これからも多くの読者や研究者を魅了し続けることでしょう。

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