ジョン・シン (第3代カートレット男爵)

第3代カートレット男爵ジョン・シン：波乱の政治家人生

第3代カートレット男爵ジョン・シン（1772年12月28日 – 1849年3月10日）は、イギリスの貴族であり、政治家として1796年から1832年まで庶民院議員を務めました。彼の生涯は、当時のイギリス政治の変動と密接に結びついていました。

生い立ちと初期の経歴

ジョン・シンは、初代バース侯爵トマス・シンと妻エリザベス（第2代ポートランド公爵ウィリアム・ベンティンクの娘）の三男として生まれました。1792年にケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジに入学し、1794年にM.A.の学位を取得しています。また、軍事面でもウィルトシャー臨時騎兵隊の少佐やセント・ジョージ志願兵連隊の副隊長を務めるなど、多岐にわたる活動を行いました。

庶民院議員としての活躍

1796年の総選挙で、ジョン・シンはウェオブリー選挙区から出馬し、当選しました。この選挙区はシン家が完全に支配しており、彼は兄ジョージと共に議席を獲得しました。その後、兄トマスがバース侯爵位を継承したことに伴い、バース選挙区の補欠選挙に出馬し、当選を果たしました。彼は1802年、1806年、1807年、1812年、1818年の総選挙でも再選を果たし、長年にわたり庶民院議員を務めました。

議会では、ジョン・シンは小ピット派として行動し、1798年の所得税法案に賛成しました。1804年に第2次小ピット内閣が成立すると、宮内副長官に任命され、枢密顧問官にも列せられました。しかし、官職任命に伴う出直し選挙での投票において不正が発覚し、免責議案が提出されるというトラブルもありました。その後、彼は再立候補して議員に復帰しています。

挙国人材内閣期（1806年 – 1807年）では政府を支持しましたが、国王ジョージ3世からカトリック解放に反対するよう命じられたため、ポートランド公爵派に転じました。パーシヴァル内閣（1809年 – 1812年）では、刑法改革、閑職改革、選挙改革、カトリック解放にすべて反対しました。王太子ジョージによる摂政期には、ウィンザー城におけるジョージ3世の宮内副長官に留任しましたが、ジョージ4世が即位した後は再任されず、政府への支持義務から解放されました。

バース選挙区を巡る状況の変化

1820年頃から、バース選挙区における状況が変化しました。1818年の総選挙で当選したシンとチャールズ・パーマーに加え、初代カムデン侯爵ジョン・プラットが選挙区への影響力回復を目指し、息子のブレックノック伯爵を擁立しました。1826年の総選挙では、シン、パーマー、ブレックノック伯爵の三つ巴の戦いとなり、最終的にシンとブレックノック伯爵が当選しました。しかし、その後も選挙戦は続き、1829年の補欠選挙ではブレックノック伯爵がパーマーを辛うじて破るという激戦となりました。

カトリック解放を巡る決断

ジョン・シンは、カトリック解放に反対する立場を貫いていましたが、ウェリントン公爵内閣がカトリック解放法案を提出すると、大方の予想を覆し、内閣を支持して法案に賛成票を投じました。この決断は、彼の選挙区における人気を大きく損なうことになりました。1830年の総選挙では、パーマーが当選確実と見られる中、パーマーの支持者がブレックノック伯爵を落選させるためにシンと手を組むという異例の事態も起こりました。

選挙法改正への反対と引退

1830年に再選した後、ジョン・シンは第1回選挙法改正に反対し、さらに人気を落としました。1831年の総選挙では、選挙法改正に反対したブレックノック伯爵が早々に脱落し、シンとパーマーが無投票で当選しました。しかし、選挙法改正を支持したパーマーが熱烈な歓迎を受けたのに対し、シンは裏口から静かに入場するという状況でした。彼はその後も選挙法改正に反対し続けましたが、1832年の総選挙には出馬せず、政界を引退しました。

カートレット男爵位の継承と晩年

1838年、兄ジョージの死去に伴い、ジョン・シンはカートレット男爵位を継承し、貴族院議員となりました。貴族院では、1846年に穀物法廃止に賛成しました。1849年3月10日、彼はヘインズ・プレースで死去しました。子女がいなかったため、カートレット男爵位は廃絶し、ベッドフォードシャーの領地は甥にあたるジョン・シン卿が継承しました。

家族

1801年、メアリー・アン・マスターと結婚しましたが、子供はいませんでした。

ジョン・シンの生涯は、激動の時代における政治家の苦悩と決断、そして変化する社会情勢への適応を物語っています。彼の政治姿勢は、一貫して保守的でしたが、時には大胆な決断を下し、その行動は賛否両論を呼びました。彼の足跡は、イギリス政治史における重要な一頁として記憶されています。

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