ジョン・ジェームズ・シャロン

ジョン・ジェームズ・シャロン（John James Chalon RA）は、1778年3月27日にスイスのジュネーヴで生を受けた、18世紀末から19世紀半ばにかけてイギリスで活躍した著名な画家、版画家です。ユグノーの家系に連なる彼は、風景画や風俗画の分野で特にその才能を発揮しました。

略歴

シャロンの人生は、出生地であるスイスからイギリスへの移住によって大きく転換期を迎えます。1790年代初頭、父親がイングランド、バッキンガムシャーにあるサンドハースト王立陸軍士官学校でフランス語及び文学の教授職に就いたことを機に、一家はイギリスへと移住しました。弟のアルフレッド・エドワード・シャロンも後に肖像画家として名を成しています。

イギリスでの新生活を始めたジョン・ジェームズは、芸術家への道を志し、1796年にロンドンの名門、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの美術学校に入学しました。ここで専門的な訓練を受け、画家としての基礎を固めます。早くも1800年には、当時の習作を示すものとして『食事中の山賊（Banditti at their Repast）』と題された作品を発表しています。

彼のキャリア初期には、活動の幅を広げる動きも見られました。1808年には、弟アルフレッドらと共に美術家グループを結成し、水彩画協会（Water-Colour Society）に入会します。水彩画の分野にも挑戦しましたが、数年後の1813年には同協会を退会し、再び油彩画に重点を移して、ロイヤル・アカデミーの展覧会に作品を出展するようになります。

歴史的な主題も手掛けており、1816年には、ワーテルローの戦いで敗れたナポレオン・ボナパルトがイギリス軍艦ベレロフォン号に乗船しプリマス沖に停泊している様子を描いた『プリマスのナポレオンが乗せられているベレロフォン（'Bellerophon' with Napoleon Aboard at Plymouth）』を制作。この作品は後に王立海軍大学校に寄贈されました。

画家としてのみならず、版画家としても重要な業績を残しています。1820年に出版された版画集『パリ風俗のスケッチ（Sketches of Parisian Manners）』は、当時のパリの日常生活や風俗を生き生きと描写した作品群であり、彼の観察眼と描写力を示しています。また、私的な交流においては、アメリカ出身の画家であるチャールズ・ロバート・レスリー（1794-1859）と親しく、互いに芸術的な刺激を与え合ったと言われています。

シャロンの芸術家としての功績は高く評価され、イギリス画壇における地位を着実に高めていきます。1827年にはロイヤル・アカデミーの準会員に選出され、さらに研鑽を積んだ結果、1841年には同アカデミーの正会員に選ばれるという最高の栄誉を得ました。

晩年は病に冒されます。1847年に脳卒中を発症し、健康状態が悪化しました。病と闘いながらの生活を経て、1854年11月14日、ロンドンにて76年の生涯を終えました。ジョン・ジェームズ・シャロンは、スイスに生まれながらもイギリスでその才能を開花させ、風景画、風俗画、版画といった多岐にわたる分野で足跡を残した、19世紀前半の重要な芸術家の一人です。

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