ジョン・ドリトル

ジョン・ドリトル博士：動物と話せる博物学者

ジョン・ドリトル博士は、ヒュー・ロフティングによる児童文学作品『ドリトル先生シリーズ』の主人公です。イングランドの田舎町パドルビーに住む、ダラム大学医学博士号を持つ博物学者で、その特異な能力と冒険の数々で知られています。

人物像：温厚な紳士と冒険家の融合

ドリトル博士は、ふくよかな体型にフロックコートとシルクハットという、いかにも英国紳士といった風貌をしています。温和な性格ながら、必要とあらば高い戦闘能力を発揮する一面も持ち合わせています。フルートの演奏を趣味とするなど、多様な才能を持つ人物でもあります。

彼は動物の権利を強く主張し、キツネ狩りや闘牛といった動物虐待を批判、実際に廃止に尽力した場面も描かれています。一方で、貧富や人種差別にはこだわらず、あらゆる生き物に敬意を払う姿勢は、当時の社会風潮とは対照的です。親友にはアフリカの王子や、貧しい肉屋など、様々な境遇の人々が含まれています。助手であるスタビンズ少年に対しても、年齢に関係なく敬意を持って接しています。

ただし、女性との交流は苦手であり、身の回りの細かいことを気にされることを嫌っています。経済観念も薄く、金銭的な苦労は絶えませんが、動物や友人たちとの温かい交流に支えられ、幸福な日々を送っています。髭を剃るのにガラス片を使うなど、独特のこだわりも持ち合わせています。

言語の達人：動物語から人間語まで

ドリトル博士は英語を母語とし、フランス語やスペイン語も話せるなど、多言語に通じています。しかし、彼の真の才能は動物語を操ることです。オウムのポリネシアから動物語を学び、やがて様々な動物と意思疎通できるようになりました。昆虫や植物とのコミュニケーションにも成功しており、動物間で通用する文字を考案し、書籍を出版するなど、その能力を活かした活動もしています。

冒険の記録：世界中を旅する博物学者

ドリトル博士は研究や標本採集のため、動物たちと共に世界中を旅します。北極点探検、アフリカでの伝染病対策、西アフリカでの郵便局再建、南米の孤島での部族紛争解決など、彼の冒険は多岐に渡ります。時には地図帳をランダムに開いて目的地を決める「盲目旅行」も敢行しています。これらの冒険を通じて、彼は多くの動物や人々と出会い、様々な経験を積んでいきます。

ドリトル博士像のモデルと映画化

ドリトル博士のモデルについては、複数の説が提唱されています。ロフティングの長男、解剖学者のジョン・ハンター、博物学者のウォルター・ロスチャイルド男爵などが候補として挙げられています。

映画化作品では、レックス・ハリソン、エディ・マーフィ、ロバート・ダウニーJrなど、多くの俳優がドリトル博士を演じています。しかし、映画版では原作とは異なる設定や描写がなされることも多く、原作版との比較も興味深い点です。

まとめ

ジョン・ドリトル博士は、動物を愛し、その権利を擁護する、温厚にして勇敢な博物学者です。彼の冒険と、動物たちとの交流は、読者に夢と感動を与え続けています。多言語の才能、動物語への造詣、そして世界中を旅する行動力は、子供だけでなく大人にも多くの示唆を与えてくれるでしょう。彼の生き方を通して、自然と共存すること、そしてあらゆる生き物への尊重の大切さを改めて考えさせられます。

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