ジョン・ネルソン (指揮者)

ジョン・ウィルトン・ネルソン（John Wilton Nelson）は、1941年12月6日に生まれ、2025年3月31日に83歳でその生涯を閉じた、アメリカ合衆国を代表する指揮者の一人です。彼は幅広いレパートリーで知られ、特にオペラや合唱音楽の分野で顕著な功績を残しました。

ネルソン氏は、コスタリカの首都サンホセで、アメリカ人の両親のもとに生を受けました。故郷を離れ、アメリカ合衆国の教育機関で音楽の道を歩み始めます。まず、イリノイ州にあるフィートン・カレッジで基礎を学びました。その後、ニューヨークに移り、著名な音楽学校であるジュリアード音楽院に進学。ここでは、高名な指揮者ジャン・モレルに師事し、その指導のもとで指揮者としての技術と解釈を深めていきました。

彼のキャリアにおいて、いくつかの重要な音楽団体のポストを歴任しました。1976年から1987年までの11年間は、インディアナポリス交響楽団の音楽監督として楽団を率いました。この在任期間中には、ニューワールド・レーベルから2点の商業録音をリリースしています。一つは現代アメリカの作曲家エレン・ターフィ・ツウィリッヒの作品集、もう一つはチャールズ・マーティン・レフラーの作品集であり、彼のレパートリーの幅広さを示唆しています。

オペラの世界でも活躍を見せ、セントルイス歌劇場では1985年から1988年まで音楽監督を、続く1988年から1991年までは首席指揮者を務めました。また、夏期音楽祭の分野にも貢献しており、1983年から1990年にかけて、ニューヨーク州カトナーで開催されたカラマー国際音楽祭の音楽監督を務めました。

さらに、ヨーロッパへと活動の場を広げ、1998年9月にはパリ室内管弦楽団の音楽監督に就任しました。このポストには長く留まりましたが、2007年3月、翌2007年から2008年の定期演奏会シーズンをもって退任することを表明しました。

ネルソン氏の指揮スタイルは、特にロマン派音楽やバロック音楽の深みのある解釈で高く評価されています。中でも、フランスの作曲家エクトル・ベルリオーズの歌劇作品を得意としており、その情熱的かつ精緻な表現は多くの聴衆を魅了しました。

彼は特定のポストに留まらず、世界各地の主要なオーケストラに定期的に客演しました。その共演歴は枚挙にいとまがありません。例えば、ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団、ボストン交響楽団、シカゴ交響楽団といったアメリカ屈指の楽団に加え、ロンドン交響楽団、ドレスデン・シュターツカペレ、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、パリ管弦楽団など、ヨーロッパの著名なオーケストラとも数多く共演し、その国際的な評価を確立しました。

ネルソン氏は、器楽作品だけでなく、合唱曲にも深い関心を持っていました。特に、古典的な宗教曲の普及に力を注ぎ、合唱指揮者としても積極的に活動しました。これは、彼の幅広い音楽的視野と、声楽作品への情熱を示すものでした。

私生活では、アニータ夫人と共にフランスのパリに居を構え、生活を送っていました。国際的な活動を続ける中でも、音楽の中心地の一つであるパリで根を下ろしていたことが窺えます。

長年にわたり世界の音楽シーンで活躍したジョン・ウィルトン・ネルソン氏は、2025年3月31日に83歳で永眠しました。彼の遺した功績は、録音や多くの共演によって、今後も語り継がれることでしょう。

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