ジョン・ハニング・スピーク

ジョン・ハニング・スピークは、1827年5月4日に生を受け、1864年9月15日に亡くなったイギリスの探検家です。彼は特に、アフリカ大陸にある広大な湖「ヴィクトリア湖」や「リポン滝」に命名した功績、そしてナイル川の源流に関する「ハム仮説」を唱えたことで歴史にその名を刻んでいます。

イングランドのデヴォンで育ったスピークは、1844年、わずか17歳でイギリス東インド会社の軍隊に加わりました。この組織は後に英印軍の前身となります。彼はコリン・キャンベルのもとで第一次シク戦争に従軍し、その間、軍務の休暇を利用してヒマラヤ山脈を踏破し、一度はチベットへと冒険の足跡を伸ばしています。

探検家としての本格的なキャリアは、1854年に当時の有名探検家、リチャード・フランシス・バートンと共にソマリアを探検したことから始まります。しかし、この探検は困難を極め、両者ともに負傷を負いました。スピークは現地の部族に捕らえられ、何度も槍で傷つけられましたが、辛うじて脱出に成功しました。一方のバートンも、投げ槍によって両頬に深い傷を負うという過酷な経験をしています。ソマリアでの苦難の後、スピークはイギリスへ戻り、クリミア戦争にも従軍しました。

1856年、再びバートンとチームを組んだスピークは、ヨーロッパ人にはまだその存在が確認されていなかったナイル川の源流を「発見」するという壮大な目的を抱き、東アフリカからアフリカ大湖沼地域へと探検の旅に出ました。この過酷な旅の途中、スピークは耳に入った虫をナイフで掻き出そうとして一時的な難聴に陥ったり、別のある時には一時的に視力を失うなど、度重なる身体的な困難に直面しました。探検隊は、ヨーロッパ人として初めてタンガニーカ湖に到達しましたが、そこでさらに現地の人々から「ウケレウェ湖」と呼ばれる別の巨大な湖についての情報を耳にします。バートンが病に倒れてしまったため、スピークは単身でこの湖を目指すことを決意しました。彼はついにこの湖に到達し、当時のイギリス女王ヴィクトリアに敬意を表して「ヴィクトリア湖」と命名しました。しかし、この重要な探検の最中、彼の観測機器が故障していたため、湖の詳細な地理データを正確に記録することは叶いませんでした。

アフリカからの帰還後、スピークは1859年5月8日にバートンよりも一足早くイギリスに到着しました。彼は直ちに王立地理学会で講演を行い、自身の探検の成果を報告するとともに、ヴィクトリア湖こそがナイル川の真の源流であるという、当時の地理学界に衝撃を与える主張を展開しました。この主張は、ナイル源流を巡る他の探検家たちとの間で激しい論争を巻き起こすことになりますが、スピークがアフリカで成し遂げた地理上の発見、特にヴィクトリア湖の探査は高く評価されました。その功績が認められ、1861年には王立地理学会から最高の栄誉の一つである金メダル（創立者メダル）が授与されました。

しかし、スピークの人生は突然の悲劇に見舞われます。1864年9月15日、英国学術協会の総会が開催される前日に、不慮の事故によって彼はこの世を去りました。所持していた銃が暴発したことが原因とされています。彼の突然の死は、ナイル源流を巡るバートンとの論争にも、図らずも終止符を打つこととなりました。

スピークの波乱に富んだ探検人生は、後にフィクションの題材ともなっています。例えば、1989年にアメリカで製作された映画『愛と野望のナイル』(原題：Mountains of the Moon)では、スピークとバートンの壮絶な探検と彼らの間の複雑な関係が描かれています。

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