ジョン・ハント・モーガン

ジョン・ハント・モーガン：波乱に満ちた生涯と軍事活動

ジョン・ハント・モーガン（John Hunt Morgan, 1825年6月1日 - 1864年9月4日）は、南北戦争における南軍の将軍であり、特に騎兵隊の指揮官としてその名を馳せました。1863年夏に実施された「モーガンの襲撃」は、彼の軍事キャリアにおける最も著名な出来事の一つであり、北軍の戦線を深く侵犯し、大きな混乱を引き起こしました。

生い立ちと初期の経歴

モーガンは、アラバマ州ハンツビルで生まれ、幼少期をケンタッキー州レキシントンで過ごしました。彼の家系はケンタッキー州の初期開拓者や富裕な実業家と繋がりがあり、著名な遺伝学者トーマス・ハント・モーガンは彼の甥にあたります。また、南軍の将軍であるA・P・ヒルやバジル・W・デュークとは義兄弟の関係にありました。

モーガンはトランシルバニア大学に在籍しましたが、決闘事件を起こし中退しました。その後、米墨戦争に騎兵兵卒として従軍し、ブエナ・ビスタの戦いに参加しました。帰還後、麻の製造業に携わり、その後は祖父が経営していた商業を引き継ぎました。1848年にはレベッカ・グラッツ・ブルースと結婚しましたが、彼女は1853年に不幸な死を遂げました。

1857年、モーガンは自ら「レキシントン・ライフルズ」と呼ばれる独立歩兵中隊を組織し、軍事訓練に励みました。

南北戦争への参加

南北戦争勃発時、モーガンはケンタッキー州の脱退には反対の立場でした。しかし、リンカーン大統領の就任と南部諸州の脱退が進む中、モーガンは南軍への参加を決意しました。1861年9月には、自らの民兵中隊を率いてテネシー州へ向かい、南軍に合流しました。その後、第2ケンタッキー騎兵連隊を創設し、大佐に任命されました。

モーガンは騎兵隊指揮官として頭角を現し、1862年5月のシャイローの戦いにも参加しました。同年7月には、約900名の部隊を率いてケンタッキー州内を襲撃し、北軍の背後を深く侵入、敵兵1,200名を捕虜にするなどの戦果を挙げました。彼の襲撃は、北軍政府を大いに動揺させ、リンカーン大統領は「彼らはケンタッキーで家畜を暴走させている」と嘆いたほどでした。この成功により、モーガンは南軍における脱退主義の象徴的存在となりました。1862年12月には准将に昇進しました。

1862年12月、モーガンはマーサ・“マッティー”・レディと結婚しました。

モーガンの襲撃

1863年夏、モーガンは「1863年の大襲撃」と称される作戦を指揮しました。これは、北軍の注意をビックスバーグやゲティスバーグから逸らす目的で行われたもので、モーガン隊はオハイオ川を渡ってインディアナ州とオハイオ州南部を襲撃しました。この襲撃は、北軍にとって脅威となり、約11万人の民兵が動員されましたが、最終的にオハイオ州バッフィントン島でモーガン隊の大半が捕獲されました。モーガン自身も7月26日に降伏を余儀なくされました。

同年11月、モーガンはオハイオ刑務所から脱獄に成功し、南部に帰還しましたが、この脱獄劇は南北両軍の新聞で大きく報じられました。

その後と最期

オハイオからの帰還後、モーガンはブラッグ将軍からの信頼を失い、1864年8月にはアレゲニー圏方面軍の指揮官に任命されました。しかし、割り当てられた兵力は十分ではなく、ケンタッキー州への再襲撃を試みましたが、規律を欠き、統制が取れない部隊を率いることとなり、大きな損失を被りました。

1864年9月4日、モーガンはテネシー州グリーンビルでの北軍襲撃時に急襲され戦死しました。享年39歳。

遺産と評価

ジョン・ハント・モーガンは、南北戦争における南軍の騎兵隊将軍として、その大胆な作戦とカリスマ性で知られています。彼の「モーガンの襲撃」は、北軍に大きな動揺を与えましたが、戦局全体に大きな影響を与えたとは言えません。しかし、彼の勇敢な行動は、南軍の兵士たちにとって大きなインスピレーションとなり、今日でも多くの人々に語り継がれています。

ケンタッキー州マンフォードビルにあるハート郡高校は、モーガン隊を讃えてマスコットに「レイダーズ」と名付け、町にはモーガンの壁画も存在しています。また、レキシントンにはモーガンを記念した像や歴史的な邸宅が残されています。

モーガンの生涯は、南北戦争という激動の時代を駆け抜けた一人の軍人の物語として、歴史に深く刻まれています。

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