A・P・ヒル

アンブローズ・パウエル・ヒルの生涯と軍事的功績

アンブローズ・パウエル・ヒル（Ambrose Powell Hill, 1825年11月9日 - 1865年4月2日）は、南北戦争における南軍の将軍としてその名を歴史に刻みました。彼は「ヒルの軽装師団」を率いて早くからその軍事的才能を示し、ストーンウォール・ジャクソンの片腕として活躍、後にロバート・E・リー率いる北バージニア軍で軍団指揮官を務め、終戦間際に戦死するという劇的な生涯を送りました。

若き日のヒル

「小さなパウェル」と部下たちから親しまれたヒルは、バージニア州カルペパーで生まれ、1847年にアメリカ陸軍士官学校を卒業しました。卒業時の成績は38人中15位であり、その後、第1アメリカ砲兵連隊に少尉として配属されました。米墨戦争やセミノール戦争に従軍し、1851年には中尉に昇進。1855年から1860年まで合衆国の海岸測量に従事しました。1859年には未亡人のキティ・モーガン・マクラーグと結婚し、後に南軍の騎兵将軍となるジョン・ハント・モーガンおよびベイジル・W・デュークとは義兄弟となりました。

南北戦争での活躍

1861年3月、南北戦争勃発の直前にアメリカ陸軍を退役。バージニア州が合衆国から脱退すると、第13バージニア歩兵連隊の大佐に任命され、第一次ブルランの戦いで頭角を現しました。翌年2月には准将に昇進し、ポトマック軍の旅団を指揮しました。1862年の半島方面作戦では、ウィリアムズバーグの戦いでの功績により少将に昇進、ロバート・E・リーの北バージニア軍で最も成功した師団指揮官の一人となりました。

ヒルの「軽装師団」（実際には南軍最大の師団）は、七日間の戦い、シーダー山の戦い、第二次ブルランの戦い、アンティータムの戦い、フレデリックスバーグの戦いなどでその実力を示しました。この師団はストーンウォール・ジャクソン軍団の一部となりました。1863年5月のチャンセラーズヴィルの戦いでジャクソンが致命傷を負った際、ヒルは短期間軍団を指揮しましたが自身も負傷しました。ジャクソンの死の床での言葉として、「ペンドルトンさん、ヒル将軍はどこにいる？彼の旅団を前に出して敵の側面を攻撃しろと伝えてくれ」という指示があったとされています。

ジャクソンの死後、ヒルは中将に昇進し、リー軍の第3軍団の指揮官となりました。この軍団を率いて、1863年のゲティスバーグ方面作戦、秋の方面作戦、オーバーランド方面作戦、そして1864年から1865年にかけてのピーターズバーグ包囲戦を戦い抜きました。

戦死

ヒルは南軍の崩壊を見たくないと言い残しており、1865年4月2日、リーがアポマトックス・コートハウスで降伏するわずか7日前に、ピーターズバーグの前線で北軍の兵士によって命を落としました。当時、彼は一人の参謀士官のみを連れて馬で前線に出ていました。

ヒルの人物像と評価

ヒルは、その軍事的才能にもかかわらず、しばしば体調不良に悩まされ、ゲティスバーグ、荒野、スポットシルバニア・コートハウスの各戦いではその能力を十分に発揮できなかったとされています。また、歴史家の中には、彼が性病に苦しんでいたと信じる者もいます。

歴史家のラリー・タッグはヒルを「常に感情的で、戦闘前にはひどく消耗しており、戦闘が始まる際に体調が悪くなる傾向があった」と評しています。しかし、その一方で、彼は自信に満ちた態度と好戦的な姿勢を持ち、赤い毛織りの狩猟用シャツを「戦闘用シャツ」と称して着用していました。部下たちは、彼がこのシャツを着ると「小さなパウェルが戦いのシャツを着けた」と言い、戦闘の準備を始めたと伝えられています。

ヒルは一般兵にも愛され、ある士官からは「リーの将軍の中で最も愛すべき人物」と評されました。その行動は時に性急で判断に欠けることもありましたが、決断力に欠けていたわけではありません。ゲティスバーグでは、リーの全軍が集結する前の7月1日に、彼の無謀な行動が批判されました。しかし、それでもヒルは南北両軍から尊敬を集める将軍の一人でした。リーは彼を「南軍の少将の中で最も優れた者」と評価し、ジャクソンは死の床で彼の名前を呼んでいました。

記念碑と遺産

バージニア州リッチモンドには、A・P・ヒルの記念碑があり、これは個人が埋葬されている唯一の記念碑です。また、バージニア州キャロライン郡には、彼の名にちなんだA・P・ヒル砦が存在し、第二次世界大戦中には、アメリカ海軍のリバティ船の一つにA・P・ヒルの名前が付けられました。彼の剣はバージニア州チェスターフィールド郡博物館に展示されています。

大衆文化におけるヒル

ロナルド・F・マクスウェルの南北戦争映画『ゲティスバーグ』(1993年)と『ゴッド&ジェネラル/伝説の猛将』(2003年)には、ヒルが登場します。それぞれの映画で別の俳優が彼を演じています。


アンブローズ・パウエル・ヒルは、その勇敢さと決断力、そして時折の無謀さによって、南北戦争の歴史に深く刻まれた人物です。彼の生涯と軍事的功績は、今日でも多くの人々に語り継がれています。

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