ジョン・ベヴィス

ジョン・ベヴィス（John Bevis, 1693年10月31日 - 1771年11月6日）は、イギリスの医師であり、同時に卓越したアマチュア天文学者でもありました。ウィルトシャーのオールド・サラムで生まれ、オックスフォード大学で医学を修めた後、ロンドンで医師として開業しました。しかし、彼の情熱は夜空に向けられ、天文学研究に没頭しました。

ベヴィスは、天体観測において重要な業績を数多く残しました。その一つが、1731年に行ったかに星雲（M1）の発見です。これは、シャルル・メシエがこの天体を再発見する27年も前のことでした。1738年にはロンドンの北に私設天文台を設立し、精力的に観測を続けました。

彼の最も重要な業績の一つは、1750年に完成した星図『ウラノグラフィア・ブリタニカ』です。この星図は、ヨハン・バイエルが1603年に発刊した『ウラノメトリア』や、ジョン・フラムスティードが1712年に出版した『天球図譜』に続くもので、79の星座を網羅的に収録しています。ベヴィスの星図は、恒星だけでなく星雲や星団も詳細に描き出しており、その中には、かに星雲（M1）の他、アンドロメダ銀河（M31）、オリオン大星雲（M42）、プレセペ星団（M44）、プレアデス星団（M45）、M11、M13、M22、M35、ケンタウルス座オメガ星団、NGC 6231などが含まれています。

『ウラノグラフィア・ブリタニカ』は、ベヴィスが長年かけて観測し、丹念にまとめ上げた大作でしたが、不幸にも出版の過程で大きな困難に直面しました。1748年にニコラ・ルイ・ド・ラカーユへの手紙の中で、この星図の制作について言及し、約180枚が印刷されたものの、出版業者の破産により公式に出版されることはありませんでした。そのため、この星図は長い間忘れ去られ、20世紀に入るまでその存在は広く知られることがありませんでした。ベヴィスの観測データは、メシエが天体カタログを作成する上で参考にされたと推測されています。それらの発見は、広く他の天文学者の業績として認知されてきました。

ベヴィスの業績は天体観測に留まりません。1737年には、金星が水星を掩蔽する珍しい現象をグリニッジ天文台で初めて観測したことでも知られています。また、その卓越した業績が認められ、1750年にはベルリン科学アカデミー、1765年には王立協会の会員にも選出されました。

ベヴィスは、1771年に望遠鏡から落下するという不慮の事故により亡くなりました。しかし、彼の観測と天文学への貢献は、後の世代に大きな影響を与えました。もし『ウラノグラフィア・ブリタニカ』が当時、広く出版されていれば、天文学の歴史は大きく変わっていたかもしれません。ベヴィスの生涯は、アマチュア天文学者としての情熱がいかに重要な発見につながるかを示す、鮮明な例と言えるでしょう。

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