ジョン・ムウェテ・ムルアカ

ジョン・ムウェテ・ムルアカ氏（Dr. John Muwete Muluaka、1961年6月21日 - 2023年8月30日）は、中央アフリカに位置するコンゴ民主共和国（かつてのコンゴ・レオポルドヴィル、ザイール共和国）に生まれ、日本を拠点に極めて多岐にわたる活動を展開した人物です。彼はタレント、電気工学の研究者、国際政治評論家、大学教授、政府の参与といった、様々な顔を持っていました。特に、衆議院議員・鈴木宗男氏の私設秘書を務めた経歴は広く知られています。2005年に日本国籍を取得して帰化しており、その際の法的な氏名はムウェテ武流阿加となりましたが、コンゴ時代の旧本名を通称として生涯使用しました。

生い立ちと日本への渡航

ムルアカ氏は1961年6月21日、当時コンゴ共和国と呼ばれていた国のレオポルドヴィル（現在の首都キンシャサ）で、10人兄弟の長男として誕生しました。大学では電気通信工学を専攻し、1981年に国立イナザ・イスタ大学を卒業。卒業後はザイール国営放送局でジャーナリストとして勤務しました。その後、1985年に日本へ移住しました。

日本での学業、タレント活動、政治秘書

来日後、彼は東京電機大学で電気工学を学び始めました。勉学に励む一方で、ユニークなキャラクターを活かしてタレントとしても活動を開始し、「邦ちゃんのやまだかつてないテレビ」をはじめとするテレビ番組に出演し、人気を博しました。学業を続けながら、衆議院議員である鈴木宗男氏の私設秘書を務めるという異色のキャリアを歩みます。この時期には、日本工業大学の非常勤講師も兼任していました。また、1989年2月には、昭和天皇の大喪の礼のために来日したザイール共和国大統領（当時）モブツ・セセ・セコ氏のスペシャルアシスタントおよび専属通訳を務めるなど、国際的な場面でも活躍しました。

研究者、教育者としての経歴

1993年に東京電機大学を卒業後、同大学の応用電子工学科で研究生として研究を継続しました。1995年には在日コンゴ民主共和国大使館の通商代表機関代表を務めています。東京電機大学の研究員として生体磁気に関する研究に取り組み、その成果をまとめた博士論文「可搬型肺磁界測定装置の開発とその応用」により、1999年に東京電機大学から博士（工学）の学位を授与されました。博士号取得後も、東京医科歯科大学で肺磁界測定装置の研究に従事するなど、科学技術分野での探求を深めました。教育者としては、駒沢女子大学や白鷗大学で非常勤講師を務めたほか、コンゴ民主共和国国立キンシャサ大学の客員教授、神奈川工科大学特任教授、千葉科学大学教授を歴任。さらに、総務省参与も務めるなど、その活動範囲は教育・研究分野にも広範に及びました。

試練と新たな道

2002年に鈴木宗男氏に関連する事件が持ち上がると、ムルアカ氏もメディアで大きく取り上げられました。2004年7月の参議院選挙で鈴木氏が落選したことに伴い、私設秘書の職を解かれ、大学での講師職も辞任せざるを得なくなりました。一時的に職を失い、生活が困難になった時期には、自給自足を行うこともあったといいます。しかし、その後再びタレントとしての活動を再開し、イベントで一日駅長を務めるなどしました。また、外国人タレントプロダクション事業共同組合の専務理事としても活動しました。2006年には、タレントのボビー・オロゴン氏と所属事務所間の騒動に巻き込まれたと報じられ、和解会見では「アフリカではよくあること」とボビー氏を擁護するコメントを発し、話題となりました。

その後の生活と交流

晩年は、神奈川県の山間部で家族と共に農業を営み、アフリカ原産の野菜などを栽培して静かな生活を送りました。政治活動からは距離を置いたものの、鈴木宗男氏との親交は続き、鈴木氏が出馬する選挙の際には応援に駆けつけることもありました。

人物像と文化的活動

身長209cmという長身から「ビッグ・ジョン」の愛称で親しまれました。その独特な風貌とキャラクターは、メディアで常に注目を集めました。家族は妻と4人の子供がおり、長男の名前を鈴木宗男氏にちなんで「ムネオ」と名付けるなど、鈴木氏との関係の深さを示すエピソードも残されています。タレントの松嶋尚美氏とも親交が深かったとされています。

彼はまた、作家としても活動し、自らの経験やアフリカに関する知見を綴った著作を複数発表しています。1991年には、オスマン・サンコン氏と「アフリカン・ブラザーズ」名義で「ひらけ!ポンキッキ」の挿入歌「JUMBO DANCE」をリリースするなど、音楽活動も行いました。

主な著作:
『光るマンゴー―ザイールの心』（1995年）
『アフリカを知るための基礎知識』（山田経三氏共著、1998年）
『ムルアカ・クレッシェンド―あなたはムルアカを知ってますか?』（2004年）
* 『中国が喰いモノにするアフリカを日本が救う』（2015年）

最期

2023年8月30日、日本からトルコのイスタンブールへ向かう航空機内にて、体調が急変し心肺停止となりました。同乗していた医師による蘇生措置も及ばず、その場で死亡が確認されました。62歳でした。かねてより心臓に持病があり、ペースメーカーを装着していたと報じられています。ムルアカ氏の訃報は、翌8月31日に鈴木宗男氏の公式ブログで公表されました。多方面にわたる活動を通じて、日本社会に忘れられない足跡を残した人物でした。

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