ジョン・ムーア・アリソン

ジョン・ムーア・アリソン：激動の時代を駆け抜けたアメリカの外交官

ジョン・ムーア・アリソン（John Moore Allison, 1905年4月7日 - 1978年10月28日）は、アメリカ合衆国の外交官です。彼は、駐日アメリカ合衆国大使、駐インドネシア大使、駐チェコスロヴァキア大使を歴任し、激動の20世紀において、アメリカの外交政策に大きな影響を与えました。

生い立ちと初期のキャリア

カンザス州ホルトンで生まれたアリソンは、ネブラスカ大学を1927年に卒業しました。大学時代には極東問題に関心を抱き、ラドヤード・キプリングの作品に傾倒したことがきっかけで、1927年に日本を訪れました。彼は、旧制小田原中学校と旧制厚木中学校で2年間英語教師として教鞭を執りました。その後、舞鶴の海軍機関学校で英語教師を務め、ゼネラルモーターズ上海支社での勤務を経て、1930年に国務省に入省しました。

外交官としてのキャリア

国務省入省後、アリソンは日本大使館での語学研修を経て、日本と中国の各地で勤務しました。在大阪領事として太平洋戦争開戦を迎えた1942年に帰国しました。終戦後もアジア関連のキャリアを重ね、国務省で要職を歴任しました。1951年には、ジョン・フォスター・ダレス特使の訪日に首席随員として随行し、1952年には極東担当国務次官補に就任、サンフランシスコ講和条約の草案作成に関与しました。

1953年4月8日、アリソンは駐日アメリカ合衆国大使に指名され、5月28日に日本政府に信任されました。在任中には日米相互防衛援助協定（MSA）の調印や、第五福竜丸事件の処理など、重要な外交課題に取り組みました。

アリソン殴打事件

1938年1月26日、南京領事時代に発生した「アリソン殴打事件」は、彼のキャリアの中で特筆すべき出来事です。日本軍が南京を占領した際、日本軍の下士官がアリソンを殴打しました。この事件は、アメリカ国内で大きな波紋を呼び、日本に対する世論の憤慨を招きました。アリソン自身の記録によれば、日本兵による中国人女性への強姦事件の調査中に、日本兵に侮辱され、殴打されたとされています。一方、日本軍はアリソンが日本軍の制止を振り切って家屋内に侵入しようとしたと主張しました。この事件は、外交官が兵卒に殴打されるという国家の面子を潰された事件として、アメリカで大きく報道されました。

駐日大使としての評価と再評価

アリソンは、第二次世界大戦中にアイゼンハワー司令部の政治顧問を務めたロバート・マーフィーや、ダグラス・マッカーサーの甥であったマッカーサー2世と比べて、知名度や政治的影響力が低いと見なされることが多かったようです。しかし、近年の研究では、アリソンが「朝鮮戦争や第一次インドシナ戦争が終結し、アジア冷戦が沈静化する中で、アメリカは政治経済ともに弱体な日本の国内状況安定を優先すべきであり、過度の再軍備を要求し、これを妨げるべきではない」という意見を本国政府に繰り返し述べていたことが明らかになっています。このような具申が、アイゼンハワー政権下での対日政策見直しや保守合同推進に影響を与えたとする再評価が生まれています。

退任後

駐日大使を退任した後、アリソンは駐インドネシア大使、駐チェコスロヴァキア大使を歴任しました。彼は、その外交手腕とアジアへの深い知識をもって、アメリカの外交政策に貢献し続けました。

著書と参考文献

アリソンは、自らの経験を基にした著書『Ambassador from the Prairie, or Allison Wonderland』を出版しました。また、彼の業績については、池井優著『駐日アメリカ大使』、池田慎太郎著『日米同盟の政治史――アリソン駐日大使と「1955年体制」の成立』などの文献で詳しく研究されています。

まとめ

ジョン・ムーア・アリソンは、激動の時代において、アメリカの外交政策に重要な役割を果たした人物です。彼は、その豊富な経験と知識を活かし、アジア地域、特に日本との関係において、アメリカの国益を追求しました。彼の外交手腕と、その後の研究による再評価は、現代の外交政策を考える上で、重要な示唆を与えてくれます。

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