海軍機関学校

海軍機関学校の概要

海軍機関学校は、1881年（明治14年）から1887年（明治20年）と、1893年（明治26年）から1945年（昭和20年）にかけて存在した、大日本帝国海軍の機関科士官を育成するための軍学校です。通称は「海機」や「機関学校」と呼ばれていました。海軍兵学校、海軍経理学校と並び、「海軍三校」の一つとして知られています。

設立と変遷

1874年、横須賀に海軍兵学寮の分校として設立されたのが始まりです。その後、1878年に海軍兵学校附属機関学校となり、1881年に独立した海軍機関学校となりました。しかし、1887年に一度廃止され、在籍していた生徒は海軍兵学校に編入されました。その後、1893年に再設置され、再び機関科士官の育成を担うことになりました。

関東大震災の影響で、1923年から1925年までの間、校舎が被災したため、江田島の海軍兵学校内に一時的に移転し、兵学校の生徒と共に教育を受けました。1925年には、京都府舞鶴へと移転しました。

1933年（昭和8年）には、昭和天皇が舞鶴港を巡幸された際、機関学校を視察されました。1942年11月には、将校制度が改正され、機関科将校が兵科将校に統合されたことに伴い、1944年10月に機関学校は廃止され、新たに海軍兵学校舞鶴分校となりました。ただし、「機関学校」の名称は、横須賀の大楠にあった海軍工機学校が継承しました。終戦後の1945年11月30日に、舞鶴分校は廃校となりました。

教育内容

機関学校では、機関術や整備技術を中心に、機械工学、火薬・燃料の調合技術、設計など、メカニズムに関するあらゆる分野の研究と教育が行われました。機関科将校の養成だけでなく、下士官に対して投炭技能や造船技術の訓練も行っていました。特に、工機学校が閉校していた大正3年から昭和3年の間は、工機学校の代替として「練習科」を併設し、技術者の育成にも力を入れていました。また、従来の機関将校育成コースは「生徒科」と呼ばれ、将来将校となる生徒の他にも、准士官や下士官も選修学生として教育していました。

歴代校長

第一次
（心得）麻生武平 六等出仕：1880年11月26日 -
（兼）仁礼景範 少将：1882年6月16日 -
（兼）中牟田倉之助 中将：1882年10月8日 -
真木長義 中将：1885年6月29日 -
（兼）有地品之允 少将：1886年6月17日 - 1887年7月15日廃止

第二次
吉田貞一 機関大監：1893年12月20日 - 1897年12月28日
湯地定監 機関総監：1897年12月28日 -
永嶺謙光 機関大監：1903年12月31日 -
山本安次郎 機関少将：1905年11月4日 - 1908年8月28日
永嶺謙光 機関少将：1908年8月28日 - 1910年12月1日
下條於兎丸 機関少将：1910年12月1日 - 1911年12月1日
市川清次郎 機関少将：1911年12月1日 - 1913年12月1日
武田秀雄 機関中将：1913年12月1日 - 1914年4月1日
賀茂厳雄 機関少将：1914年4月1日 - 1916年4月1日
木佐木幸輔 機関少将：1916年4月1日 - 1917年12月1日
船橋善弥 機関中将：1917年12月1日 -
平塚保 機関少将：1921年9月1日 - 1923年5月25日
池田岩三郎 機関少将：1923年5月25日 -
岡崎貞伍 機関中将：1924年7月25日 -
清水得一 少将：1925年4月15日 -
山下巍八郎 中将：1928年12月10日 - 1929年11月30日
黒田琢磨 中将：1929年11月30日 -
小野寺恕 少将：1931年12月1日 -
上田宗重 中将：1934年5月10日 -
兼田市郎 少将：1935年12月2日 -
平岡礹 中将：1938年11月15日 -
鍋島茂明 中将：1941年11月20日 -
柳原博光 中将：1943年10月25日 - 1944年10月1日 ※海軍兵学校へ統合、舞鶴分校となる

主な卒業生

機関学校からは、数多くの優秀な技術者や将校が輩出されました。以下に主な卒業生の一部を紹介します。

第一次
旧2期：武田秀雄（中将）
旧4期：中島與曽八（機関中将）、藤井光五郎（機関少将）
第二次
1期：岩辺季貴（中将）、大沼龍太郎（機関少将）
2期：岡崎貞伍（中将）、増井敬次郎（中将）
3期：池田岩三郎（中将）、重村義一（機関少将）
5期：清水得一（中将）、水谷幸太郎
7期：山下巍八郎（中将）
10期：杉政人（中将）、後藤兼三（少将）
11期：黒田琢磨（中将）、牛丸福作（中将）
12期：小野寺恕（中将）、伊地知四郎（少将）、城戸忠彦（少将）、林正男（少将）、竹垣純信（中佐）、鹿子木員信（中尉）
13期：上田宗重（中将）、小野徳三郎（中将）、赤堀研吉（少将）、石河英吉（少将）、満岡諒次（少将）、籾山重幸（大佐）
14期：河瀬真（少将）
15期：氏家長明（中将）、中島知久平（大尉）
16期：兼田市郎（中将）
17期：平岡礹（中将）、広瀬藤蔵（少将）
18期：石井常次郎（中将）、渋谷隆太郎（中将）
19期：鍋島茂明（中将）、櫻井武雄（大佐）、村井貞亨（大佐）
20期：柳原博光（中将）
22期：中村止（中将）、森住松雄（中将）
24期：榎本隆一郎（中将）
26期：上野権太（中将）
33期：谷本政一（中佐）
40期：河野克次（中佐）
45期：松平永芳（少佐）
49期：角田義隆（大尉）
51期：黒木博司（少佐）

関連事項

海軍機関科問題
神戸海軍操練所
海軍大学校
軍学校
防衛大学校
海上自衛隊幹部候補生学校
軍服 (大日本帝国海軍)#生徒
王立海軍機関学校

その他

作家の芥川龍之介は、1916年から1919年まで、本校で英語の嘱託教官を務めていました。この時、通勤で利用していた横須賀線での実体験を基に小説「蜜柑」を執筆しました。また、内田百閒（ドイツ語）や豊島与志雄（フランス語）を嘱託教官に推薦し、２人は震災による移転まで勤務しました。


海軍機関学校は、日本の海軍技術を支える重要な役割を果たした軍学校でした。

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