ジョン・メイヒュー

ジョン・メイヒュー（John Mayhew, 1947年 3月27日 - 2009年 3月26日）は、英国の著名なプログレッシブ・ロックグループ、ジェネシスにおいて、短期間ながらもバンドの初期を支えたドラマーです。1969年から1970年にかけて在籍し、バンドのサウンド形成に貢献しました。

幼少期からキャリア初期

イングランド東部のイプスウィッチで生を受け、兄ポールと共に育ちました。両親の離婚後、メイヒューは父親との生活を選択しましたが、音楽への深い愛情は母親から受け継いだものでした。彼は早くからドラムに親しみ、地元イプスウィッチのバンド、「The Clique」や「The Epics」で演奏経験を積みました。1960年代後半には、より大きな音楽シーンを求めてロンドンへ活動拠点を移し、「ミルトンズ・フィンガー」というバンドに参加。この時期に録音された楽曲の中には、アセテート盤として制作されたものもあります。ジェネシス加入以前、彼はロンドンのディーン・ストリートで、ロニー・スコッツの上階にある会場でジェネシスが演奏しているのを目撃したと語っています。

ジェネシスへの参加と貢献

1969年の夏、学業に専念するためアメリカへ旅立った前任ドラマー、ジョン・シルヴァーの後を引き継ぐ形で、メイヒューはジェネシスに加入しました。バンドメンバーとの出会いは、彼がロンドン中に貼った自身の連絡先をベーシストのマイク・ラザフォードが見つけ、接触してきたことによるものだと、後のインタビューで明かしています。バンド側は、メイヒューの長い髪という外見、プロフェッショナルな演奏への姿勢、そして自身のドラムセットを所有していたことに感銘を受けました。彼は単なるミュージシャンとしてだけでなく、熟練した大工でもあり、その技術はバンドにとって非常に有益でした。例えば、彼らはかつてパン屋の配達用に使われていたバンを所有していましたが、メイヒューはその内装を改造し、バンドの機材運搬や移動に適した車両に変身させました。また、ライブパフォーマンス中にしばしば故障しがちだった自家製のレスリー・スピーカーのために、頑丈で信頼性の高いキャビネットを製作しています。

給与に関するエピソードも知られており、レコード会社から週15ポンドの給与が提示された際、彼は「10ポンドで十分だ」と主張し、他のメンバーを驚かせると共に、その謙虚さから少々非難されたといいます。

在籍と離脱

ジェネシス在籍期間中、メイヒューはバンドにとって重要な転換点となったアルバム『侵入』（Trespass, 1970年）のレコーディングに携わりました。この作品は、後のプログレッシブなサウンドの方向性を示す初期の傑作とされています。しかし、彼のジェネシスでのキャリアは約1年間という短いものでした。1970年7月、彼はバンドを離れることになり、後任として将来的にバンドのフロントマンとなるフィル・コリンズが加入しました。後に、ジェネシスのキーボーディストであるトニー・バンクスは、メイヒューの追悼に際し、彼がバンドメンバーよりもライブ演奏の経験が豊富であり、特にステージ上での振る舞いについて、初期のバンドに影響を与えた可能性を示唆しています。「彼は私たちより少し年上で、ステージで何をすべきかについてある程度の知識を持っていた」と振り返り、初期のツアーにおけるメイヒューの存在の重要性を認めています。

バンド脱退後の人生と復帰

ジェネシスを離れた後のメイヒューの足取りは、長らく不明な点が多かったため、死亡説や行方不明説といった様々な憶測を呼びました。しかし、実際には1982年に遠くオーストラリアへ移住し、そこで大工として安定した生活を築いていました。1989年には、母親の体調が悪化したため、一時的にイギリスへ帰国しています。そして2006年、ロンドンで開催されたジェネシス・コンベンションに、元メンバーであるアンソニー・フィリップスやスティーヴ・ハケットと共に姿を現し、多くのファンを喜ばせました。このイベントでは、トリビュートバンド「ReGenesis」との共演で、ジェネシスの代表曲の一つである「The Knife」を演奏し、久々に公の場でドラマーとしてのパフォーマンスを披露しました。

晩年と死去

晩年も変わらず大工として生計を立てていたジョン・メイヒューは、2009年 3月26日、自身の62歳の誕生日の前日に、スコットランドのグラスゴーにて心臓病のため亡くなりました。彼の死去は、ジェネシスの初期の歴史における重要な一部を担った人物の人生に幕を下ろしました。

ディスコグラフィ

ジョン・メイヒューがドラムを担当した主なジェネシスのアルバムは以下の通りです。

* 『侵入』（Trespass, 1970年）

※コンピレーションやボックスセットにも彼の演奏は収録されています。

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