スティーヴ・ハケット

スティーヴ・ハケット：プログレッシブ・ロックの巨匠

スティーヴ・ハケット（Steve Hackett、本名：Stephen Richard Hackett、1950年2月12日 - ）は、イギリス・ロンドン出身のギタリスト、シンガーソングライターです。彼は、プログレッシブ・ロック・バンド「ジェネシス」の元メンバーとして、世界的に知られています。2010年には、ジェネシス名義で『ロックの殿堂』入りを果たしました。

ジェネシス加入以前

ハケットは、Canterbury Glass、Sarabandeといったバンドを経て、1970年にクワイエット・ワールドのアルバム『永遠なる回帰』でプロデビューしました。その後、アンソニー・フィリップスの後任としてジェネシスに加入し、その音楽キャリアを大きく飛躍させました。

ジェネシス時代

1971年、ジェネシスのサード・アルバム『怪奇骨董音楽箱』から参加し、1977年のライブ・アルバム『幻惑のスーパー・ライヴ』まで、バンドの黄金期を支えました。彼のギタープレイは、ジェネシスの音楽に不可欠な要素となり、叙情的でテクニカルな演奏は多くのファンを魅了しました。特に、タッピング奏法の先駆者としても知られ、『怪奇骨董音楽箱』収録の「The Musical Box」や「The Return of the Giant Hogweed」でそのテクニックを披露しています。

ソロ活動

ジェネシス脱退後は、ソロ・アーティストとして独自の音楽性を追求しています。1975年には、ジェネシス在籍中に初のソロ・アルバム『ヴォヤージ・オブ・ジ・アカライト（侍祭の旅）』を発表。このアルバムには、フィル・コリンズやマイク・ラザフォードも参加し、彼のソロ活動を支えました。また、実弟であるジョン・ハケット（フルート奏者）との共演も多く、兄弟ならではの息の合った演奏を聴かせています。

1978年には、セカンド・ソロ『プリーズ・ドント・タッチ』を発表。リッチー・ヘブンス、ランディ・クロフォード、スティーヴ・ウォルシュなど、多彩なゲストシンガーを迎え、フォーク、R&B、アメリカン・プログレハードなど、幅広い音楽性を融合させた作品となりました。1979年の『スペクトラル・モーニングス（虹色の朝）』、1980年の『ディフェクター』も、彼の代表作として高く評価されています。

1986年には、スティーヴ・ハウとGTRを結成し成功を収めましたが、ツアー終了後に脱退。1996年には、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団やビル・ブルーフォードらと共演し、ジェネシスの音楽を再構築したアルバム『ジェネシス・リヴィジテッド（新約創世記）』を制作。ジョン・ウェットン、イアン・マクドナルド、チェスター・トンプソンらとライブ用バンドを結成し、来日公演も行いました。

近年の活動

2003年頃から、ハンガリーのエスニック・ジャズ・バンド、ジャベ（Djabe）と共演。2012年には、イエスのベーシスト、クリス・スクワイアとのユニット「スクアケット（SQUACKETT）」でアルバムを発表。また、『ジェネシス・リヴィジテッドII』を発表し、ワールドツアーを敢行しました。2015年にはアルバム『ウルフライト〜月下の群狼』、2017年にはアルバム『ザ・ナイト・サイレン〜天空の美情』をリリースするなど、精力的な活動を続けています。

音楽性

ハケットの音楽性は、プログレッシブ・ロックを基盤としながらも、クラシック、フォーク、R&B、ワールドミュージックなど、多様なジャンルを取り入れています。初期ジェネシスの音楽性を色濃く残しつつも、ギターをフィーチャーした叙情的なサウンド、ポップなメロディ、ダークな雰囲気などを絶妙にブレンドさせ、独自のスタイルを確立しました。また、クラシック・ギターの演奏にも力を入れており、インストゥルメンタル作品も多数発表しています。

プレイスタイル

ハケットのプレイスタイルは、アグレッシブでトリッキーなプレイ、サステインを効かせた「泣き」のフレージングが特徴です。ピックや指で弦を擦るグリッサンド、ピックでピックアップをノックする奏法、タッピング奏法など、多彩なテクニックを駆使し、ギターの可能性を追求しています。また、トレモロ奏法などを駆使した本格的なクラシック・ギター演奏も、彼の音楽の大きな部分を占めています。

ジェネシス時代からギブソン社のレスポールを愛用していますが、フェルナンデス社がサスティナーを開発してからは、同社のレスポール・モデルをメインギターとして使用しています。アコースティック・ギターはヤイリ社のものを主に使用しています。

スティーヴ・ハケットは、プログレッシブ・ロックの歴史に名を刻むギタリストであり、その音楽性は、今もなお多くのファンに愛され続けています。

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