ジョン・モーズビー

ジョン・モーズビー

ジョン・モーズビー（John Moresby、1830年3月15日 - 1922年7月12日）は、19世紀から20世紀初頭にかけて活躍したイギリス海軍の将校であり、探検家です。イングランドのサマセット州アラーフォードに生まれ、晩年はハンプシャー州フェアハムで過ごしました。

彼の生涯は、イギリス海軍での長きにわたる勤務と、特に太平洋地域における重要な探検活動によって特徴づけられます。モーズビーの父、フェアファックス・モーズビー提督（Admiral Sir Fairfax Moresby）もまた著名な海軍将校であり、ジョンはその父の足跡を追う形で海軍に入りました。

モーズビーの最も特筆すべき功績の一つは、ニューギニア島南東部の沿岸を探検したことです。当時、この地域の詳細な地理情報は乏しく、探検は航路の確保や資源の調査、そしてイギリスの勢力圏拡大といった戦略的な目的を持って行われました。1873年、彼はHMS Basilisk号を指揮し、この未知の海域に乗り出しました。

探検の過程で、モーズビーは特に今日のパプアニューギニアの首都が位置する天然の良港を発見しました。彼はその湾を、彼の父の名にちなんでフェアファックス港（Fairfax Harbour）と命名しました。そして、その湾の近くに位置していた大きな先住民族の村、ハヌアバダ（Hanuabada）の周辺地域に目をつけ、将来的な港湾都市の建設に適した場所であると判断しました。彼はこの地にイギリス国旗を掲げ、新たな拠点の基礎を築きました。この時彼が注目し、開発の契機を作った場所こそが、後に彼の名を冠して「ポートモレスビー（Port Moresby）」と呼ばれるようになる町の発端でした。

モーズビーは、この探検で得た知見をまとめ、1876年に著書『ニューギニアとポリネシア…』（New Guinea and Polynesia, Discoveries and Surveys in New Guinea and the D'Entrecasteaux Islands, a Cruise in Polynesia and Visits to the Pearl Shelling Stations in Torres Straits of H.M.S. Basilisk）として発表しました。この著作は、当時のニューギニア地域の地理や自然、そして先住民族に関する貴重な記録となり、彼の探検の様子を詳細に伝えています。この本は後に2002年に復刻されています。

彼の私生活では、1859年にアイルランドのクイーンズタウン出身のジェーン・ウィリス・スコットと結婚し、六人の子供をもうけました。

ウォルター・ハリデー・モーズビー（Walter Halliday Moresby、1861年 - 1951年4月24日）は、後にCBE（大英帝国勲章コマンダー）を受章しています。
エリザベス・ルイザ・モーズビー（Elizabeth Louisa Moresby、1862年 - 1931年）は、有名な作家として知られています。
エセル・フォーテスキュー・モーズビー（Ethel Fortescue Moresby、1865年 - ?）
ジョージナ・モーズビー（Georgina Moresby、1867年 - ?）
ヒルダ・フェアファックス・モーズビー（Hilda Fairfax Moresby、1868年12月16日 - 1893年8月16日）
グラディス・モーズビー（Gladys Moresby、1870年 - ?）

ジョン・モーズビーはまた、父フェアファックス提督との二代にわたる海軍でのキャリアを記した『二人の提督』（Two Admirals, Admiral of the Fleet, Sir Fairfax Moresby (1786-1877), and His Son, John Moresby. A Record of Life and Service in the British Navy for a Hundred Years）を1909年に出版しています。これは、100年にわたるモーズビー家の海軍における貢献を記録した貴重な文献です。

ジョン・モーズビーの探検とその後の町の建設は、この地域の歴史において重要な転換点となりました。彼が「発見」し、その建設に道筋をつけた港湾は、イギリスの保護領、そして後のオーストラリア領パプアにおける行政の中心地となり、現在ではパプアニューギニアの首都として繁栄しています。彼の名は、この国の最も重要な都市の名として、今日まで広く記憶されています。

もう一度検索