ジョン・ローブリング

ジョン・オーガストス・ローブリング：吊り橋のパイオニア

ジョン・オーガストス・ローブリング（1806年6月12日 - 1869年7月22日）は、ドイツのテューリンゲン州ミュールハウゼン出身の土木技術者です。彼は吊り橋に使用するワイヤロープの開発、そして何よりもニューヨークのブルックリン橋の設計者として世界的に知られています。

若き日のローブリング

幼い頃から音楽や芸術に親しみ、バッハやゲーテを愛したローブリングは、9歳の時にブルックリン橋を彷彿とさせる模型の橋を作るなど、幼少期からその才能を発揮していました。故郷ミュールハウゼンのゴシック建築は、彼の美的感覚と、建築物の永続性への意識を育みました。

学問と啓発

エアフルトのギムナジウムで建築修士の資格を得た後、ベルリンの王立ポリテクニックに進学。建築、工学、橋梁建築、水理学などを幅広く学び、土木工学の学位を取得しました。また、ドイツの哲学者ヘーゲルに師事し、哲学も修めています。

新天地アメリカへ

大きな橋を架けるという夢を抱きながらも、当時のドイツの社会情勢からその実現が困難であったローブリングは、1831年に兄弟や友人と共にアメリカへ移住を決意します。ペンシルベニア州に土地を購入し、サクソンバーグという入植地を築き、新たな生活をスタートさせました。

エンジニアとしての再出発

アメリカでの当初は農業に従事していましたが、1837年にエンジニアとしての活動を再開。河川改良や運河建設に携わった後、鉄道建設にも従事しました。吊り橋への情熱を胸に、彼はその技術を活かせる場所を求めていました。

ワイヤロープの開発

1841年、サクソンバーグでワイヤロープの開発に成功。アレゲニー・ポーテージ鉄道での事故をきっかけに、ドイツの雑誌で読んだワイヤロープを思い出し、独自の製造方法を確立しました。その後、ローブリング・アンド・サンズ・カンパニーを設立し、ワイヤロープの大量生産を開始。このワイヤロープは、彼が設計する数々の吊り橋で使用されることになります。

吊り橋建設の成功

1844年、アレゲニー川に吊り橋式の水道橋を建設。その成功を機に、ピッツバーグのモノンガヒラ川にも吊り橋を架けました。その後も、デラウェア・アンド・ハドソン運河に複数の吊り橋式水道橋を建設するなど、その技術力を高く評価されました。

ナイアガラの滝吊り橋

1851年、ニューヨーク・セントラル鉄道とカナダのグレート・ウェスタン鉄道を結ぶナイアガラの滝吊り橋の建設に着手。鉄道と人馬が通行可能な二層構造の吊り橋は、彼の技術力の高さを世界に示すものでした。

南北戦争とシンシナティ・コビントン橋

南北戦争の影響で一時活動を中断しましたが、戦時中の1863年にシンシナティのオハイオ川に架かる橋の工事を再開。1867年に完成したシンシナティ・コビントン橋は、当時世界最長の吊り橋となり、彼の名声を確立しました。

ブルックリン橋と悲劇的な死

1867年、ローブリングは生涯の傑作となるブルックリン橋の設計に着手。しかし、1869年に橋の建設予定地を視察中、事故により足を負傷。破傷風を発症し、その24日後に亡くなりました。彼の死後、ブルックリン橋の建設は息子のワシントン・ローブリングと、その妻エミリー・ローブリングによって引き継がれ、完成しました。

ローブリングの遺産

ジョン・A・ローブリングは、吊り橋の設計と建設における革新的な技術と、先駆的な発想で、土木工学の発展に大きく貢献しました。彼の設計した橋は、現在も世界各地で利用されており、その功績は永く語り継がれています。

主なプロジェクト

1844年 - アレゲニー水路橋（ペンシルベニア州ピッツバーグ）
1846年 - スミスフィールド・ストリート橋（同）
1848年 - ラッカワクセン水路橋
1849年 - デラウェア水路橋
1850年 - ハイ・フォール水路橋
1850年 - ネバーシンク水路橋
1854年 - ナイアガラの滝吊り橋
1859年 - アレゲニー橋
1866年 - ジョン・A・ローブリング橋
1869年 - ウェーコ吊り橋（テキサス州ウェーコ）
1872年 - バレット橋（ニューヨーク州ポート・ジャービス）
1883年 - ブルックリン橋

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