ジョン・ローマー

ジョン・ローマーの学問的業績

ジョン・ローマー（John E. Roemer）は、1945年2月1日生まれのアメリカの経済学者および政治学者です。イェール大学でエリザベス＆ヴァリック・スタウト記念教授として政治科学と経済学の分野で教鞭を執っています。彼はカリフォルニア大学デイヴィス校の経済学部でも教授をしていましたが、学界に入る前は労働組合の活動を行っていた経歴があります。

学歴と初期のキャリア

ローマーは1966年にハーバード大学から数々の賞を得て数学の学士号を取得しました。以後、数学の研究を続けるためカリフォルニア大学バークレー校の大学院に進みましたが、ベトナム戦争に関連する政治的活動によって退学処分を受けることとなりました。最終的に、1974年にはバークレー校から経済学の博士号を取得したのです。

分析的マルクス主義の提唱

ローマーは分析的マルクス主義の著名な支持者であり、ジェラルド・コーエンやジョン・エルスターらと共にその理論を模索しています。彼の初期の著作には、マルクス主義の理論をゲーム理論やミクロ経済学的観点から検討した書籍が多数あります。「マルクス派経済理論の分析的基礎」や「価値、搾取、階級」などの作品が代表的です。これらを通じて彼は、マルクス主義理論に新たな視点を持たせようとしています。

分配の正義と機会均等

さらに、ローマーは分配の正義に関する研究で特に知られています。彼は「機会の平等」に関する著作を執筆し、経済的見通しは個人の生まれた背景に依存すべきではなく、努力のみに基づくべきであると強調しています。そして最近の著書「民主主義、教育、平等」では、政治的機構である民主主義が個人の経済的な見通しの公平性を保証する役割には限界がある、という意見を表明しています。

政治経済学における新たなアイデア

またローマーは、政治経済学の分野でも独自の理論を提唱しています。「政治的競争」という著作では、従来の政治競争のモデルが多次元的な政策空間での競争を十分に捉えきれないことを指摘しています。彼は、部分的合意ナッシュ均衡（PUNE）という新たなコンセプトを用いて、政党が提案する政策の予測に関する解決策を提示しています。ここでは、政党が「日和見派」、「過激派」、「改革派」の3つの構成要素から成り立っているとし、それぞれの役割について考察しています。

2つの政党において、ある2つの政策が部分的合意ナッシュ均衡となる条件を示すことで、政策決定メカニズムの理解を深めています。この理論は、人種差別や排外主義の問題にも応用され、未解決の課題に取り組むためのツールとして機能しています。

日本語訳著作

ローマーの業績は、翻訳書を通じても多くの読者に影響を与えています。中でも「これからの社会主義――市場社会主義の可能性」や「分配的正義の理論――経済学と倫理学の対話」といった著作は、その理論の普及に寄与してきました。

結論

ジョン・ローマーは、左派経済学、分析的マルクス主義、分配の正義の研究において多大な影響を及ぼした学者であり、その業績は現代の社会的課題に応えるための重要な理論的基盤を提供しています。

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