ジョヴァンニ・バリオーネ

ジョヴァンニ・バリオーネ（1566年 - 1643年）は、イタリアの画家であり、著述家としても知られています。彼は、16世紀後半から17世紀前半のローマで活動し、同時代の芸術家たちの伝記をまとめた『画家、彫刻家、建築家列伝』の著者として名を残しました。この著作は、当時の芸術家たちの活動や人物像を知る上で重要な資料となっています。

生涯

ローマで生まれたバリオーネは、ペルージャの貴族の出身であると自称していましたが、実際にはフィレンツェ出身の画家、フランチェスコ・モレリに師事したとされています。初期の活動はローマとナポリが中心で、1600年にはジュゼッペ・チェーザリ（カヴァリエーレ・ダルピーノ）と共同で、サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂の装飾に携わりました。

1590年代初頭にローマにやってきたカラヴァッジョは、チェーザリの工房で働いた後、独自のスタイルを確立して人気を集めました。バリオーネもその影響を受け、作品にカラヴァッジョ風の要素を取り入れるようになりました。しかし、教会の祭壇画の注文を巡り、両者は激しく対立することになります。1603年には、カラヴァッジョとその仲間がバリオーネを中傷するビラを撒いたとして、裁判にまで発展しました。この裁判は、当時のローマの芸術界の複雑な人間関係を浮き彫りにしました。

1610年代に入ると、バリオーネはアンニーバレ・カラッチを中心とするボローニャ派の画家たちの影響を受けるようになります。1621年から1622年にかけては、マントヴァ公フェルディナンド1世の宮廷画家としてマントヴァに滞在し、ヴェネツィア絵画のコレクションからインスピレーションを得ました。その後再びローマに戻り、生涯を終えました。

バリオーネは、1593年から亡くなるまでローマのアカデミア・ディ・サン・ルカのメンバーであり、3度会長を務めるなど、当時のローマの芸術界において重要な役割を果たしました。

作品

バリオーネは、宗教画や神話画、肖像画など、様々なジャンルの作品を手がけました。初期にはカラヴァッジョの影響を受けた写実的な表現が特徴でしたが、後にボローニャ派の古典的な様式を取り入れるようになります。彼の作品は、繊細な描写と洗練された構図が特徴であり、同時代の画家たちの中でも高い評価を得ていました。特に、フレスコ画の制作において才能を発揮し、ローマの教会や宮殿に多くの作品を残しました。

著作

バリオーネは、画家としてだけでなく、著述家としても重要な活動を行いました。彼の著作の中で最も有名なのは、1642年に出版された『画家、彫刻家、建築家列伝』です。この著作は、1572年から1642年までのローマで活躍した芸術家たちの伝記をまとめたもので、貴重な史料として今日でも高く評価されています。また、1639年にはローマの教会に関する著作『ローマの九つの教会』も出版しています。

評価

バリオーネは、生前は画家として高い評価を得ていましたが、カラヴァッジョとの裁判の影響もあり、後世の評価は必ずしも一定ではありませんでした。しかし、近年では彼の作品の質が再評価され、芸術史における彼の重要性が認められるようになっています。また、彼の著作は、当時の芸術家たちの活動や人物像を理解する上で不可欠な資料として、研究者たちに活用されています。

ジョヴァンニ・バリオーネは、画家、著述家、アカデミアの要職を務めた人物として、17世紀のローマの芸術界に大きな足跡を残したと言えるでしょう。

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