ジョーイ・ラモーン

ジョーイ・ラモーン：パンクの魂、その光と影

ジョーイ・ラモーン（本名：ジェフリー・ロス・ハイマン、1951年5月19日 - 2001年4月15日）は、アメリカが生んだ伝説的パンク・ロックバンド、ラモーンズのボーカリストです。その長身（198cm）と痩身、そして顔を覆う黒髪は、ステージ上での強烈な個性を放ち、観客を魅了しました。

生い立ちと音楽への目覚め

ニューヨーク市クイーンズ区フォレスト・ヒルズで、ユダヤ系の家庭に育ちました。フォレスト・ヒルズ高校では、後にバンドメンバーとなる仲間たちと出会います。両親の離婚など、家庭環境は決して恵まれたものではありませんでしたが、音楽好きの母親シャーロットの影響を受け、幼い頃から音楽に親しみました。

ザ・フー、ビーチ・ボーイズ、ベンチャーズといったオールディーズや、フィル・スペクターがプロデュースしたガール・グループを愛聴し、その音楽的嗜好は、ラモーンズの楽曲に色濃く反映され、独特のポップセンスと歌詞を生み出す源泉となりました。

13歳でドラムを始め、ラモーンズ結成当初はドラムを担当。しかし、ディー・ディー・ラモーンのボーカルが適任でないと判断され、トミー・ラモーンの推薦により、ジョーイがボーカルを務めることになりました。

ラモーンズ：光と影

ジョーイは、ラモーンズの「ハート・アンド・ソウル」と称され、彼の好む楽曲はバラードやラブソングが多かったとされます。C・J・ラモーンは彼を「グループのヒッピー」と評しました。

ギタリストのジョニー・ラモーンとの不仲は有名で、長年口をきかない時期もありましたが、音楽面では頻繁に意見交換をしていました。確執の原因は、ジョニーがジョーイの恋人リンダを「奪った」ことにあります。ジョニーは後にリンダと結婚し、ジョーイの敵意について語っています。

アルバム『プレザント・ドリームス』に収録されたジョーイ作の「The KKK Took My Baby Away」は、リンダを寝取ったジョニーをKKKに例えて表現したもので、ライブでも頻繁に演奏されました。ジョニーは、曲の内容に関わらず、ファンが支持する曲は演奏すると語っています。

政治的思想の違いも2人の対立を深めました。自由主義者のジョーイに対し、ジョニーは保守主義者でした。しかし、ラモーンズでは政治的なメッセージを楽曲に込めることは意識的に避けられていました。

晩年と死、そしてレガシー

ジョーイ・ラモーンは、2001年4月15日、ニューヨーク長老派教会病院でリンパ腫のため49歳で亡くなりました。1990年代中頃からリンパ腫を患い、闘病生活を送っていました。その死を悼み、多くのファンやミュージシャンが追悼の意を表しました。

亡くなる直前にU2の「In a Little While」を聴いていたとされます。U2のボノは、「エレヴェイション・ツアー」で、この曲をジョーイにとってのゴスペルに変えたと語り、2014年のアルバム『ソングス・オブ・イノセンス』のオープニング曲を「ザ・ミラクル(オブ・ジョーイ・ラモーン)」と名付けました。

死後の2002年には、ソロ・アルバム『Don't Worry About Me』がリリースされ、ルイ・アームストロングのカバー「この素晴らしき世界」がシングルカットされました。

2003年11月30日、ニューヨークの東2番街のブロックは「ジョーイ・ラモーン・プレイス」と改名されました。そこは、ジョーイがディー・ディーと暮らした場所であり、ラモーンズがそのキャリアをスタートさせたCBGBの近くでした。ジョーイの誕生日は毎年、彼の母親（2007年没）と兄弟が経営するニューヨークのナイトクラブで祝われています。

音楽史に刻まれた名前

ジョーイ・ラモーンは、その音楽と生き様を通して、パンク・ロックの精神を体現し、後世のミュージシャンに多大な影響を与えました。彼の歌声は、今もなお世界中の音楽ファンを魅了し続けています。

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