ジョージ・ロイド

ジョージ・ロイド（George Walter Selwyn Lloyd）は、1913年6月28日にコーンウォールのセント・アイヴズで生まれ、1998年7月3日にロンドンで亡くなったイギリスの作曲家です。

生涯

ロイドの音楽への道は、ヴァイオリン奏者アルバート・サモンズに師事したことから始まりました。彼は後にオーケストラのヴァイオリニストを目指してロンドンへ出ますが、その道は開けませんでした。しかし、10代の頃から書きためていた彼の作品は、作曲家ジョン・アイアランドの目に留まります。1939年、1932年に作曲された交響曲第1番のBBCラジオでの初放送が内定しますが、アイアランドが自身の弟子であるベンジャミン・ブリテンの作品を優先したため、この計画は実現しませんでした。

第二次世界大戦が始まると、ロイドは海軍に入隊します。しかし1942年、商船護衛任務中に彼が乗艦していた駆逐艦がドイツの潜水艦による攻撃で沈没しました。彼は命を取り留めたものの、深刻な戦争神経症（シェル・ショック）に苦しみ、軍を離れることになります。除隊後、1948年まで彼は妻の故郷であるスイスのサナトリウムで療養生活を送りました。戦後アメリカへ渡った後も、シェル・ショックの後遺症のためほとんど人との関わりを絶ったような生活で、リハビリも兼ねたカーネーションやきのこの栽培で生活の糧を得ました。顧みられるか分からない状況でも、作曲は細々と続けられ、この時期に交響曲第4番や第5番などが生み出されました。

一つの転機が訪れたのは1951年、3作目のオペラ「ジョン・ゾックマン」を名門のイギリス音楽祭から依頼された時です。この作品の台本は、前年に亡くなった父の手によるものでしたが、結局採用には至らず、代わりにブリテンのオペラが上演されました。この出来事は再びロイドの心に暗い影を落とすことになりました。

その後、ジョージ・ロイドの名は長らくイギリスの音楽界で忘れ去られた存在となります。1964年にピアノ協奏曲第1番が初演されるといった活動もありましたが、ロンドン以外での上演だったため、広く注目されることはありませんでした。

しかし、1977年に彼のその後の人生を大きく変える出来事が起こります。エドワード・ダウンズ指揮による交響曲第8番（1961年作曲）のBBCラジオでの放送初演です。放送が終わると、BBCの電話回線は演奏された曲に関する問い合わせで一時麻痺状態に陥るほどの大きな反響がありました。

さらに彼の名声を確固たるものにしたのは、オラトリオ「ヴィーナスの前夜祭」（1980年）です。これはヘンデル以来のイギリス宗教音楽の傑作と評する声もあったほどでした。この成功は、後に「連祷」（1995年）や「交響的ミサ」（1993年）といった重要な合唱作品へと繋がっていきます。遺作となったのも、1998年に亡くなる2週間前に完成された無伴奏合唱のための「レクイエム」であり、合唱曲がロイドにとって重要なジャンルであったことを示しています。

1984年には指揮者としても活動を開始しました。オルバニー・レコードからリリースされた20枚を超えるCD作品集では、自身の管弦楽曲を自ら指揮しました。また、レコーディングだけでなく、交響曲全集でも共演したオルバニー交響楽団の指揮台にはしばしば立ち、交響曲第11番（1985年）の作曲の委嘱も受けました。

作品

ロイドは多作な作曲家であり、特に交響曲は12曲を数え、彼の創作の中心を占めています。初期から意欲的に交響曲に取り組み、戦中の沈黙期を経てなお、後半生に精力的に作曲を続けました。管弦楽曲、吹奏楽曲、ブラスバンド曲といった器楽編成の作品に加え、4曲のピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲、チェロ協奏曲といった協奏曲も手掛けています。

オペラは「イエルニン」「セルフ」「ジョン・ゾックマン」の3作品があり、合唱曲では再評価のきっかけとなった「ヴィーナスの前夜祭」や、遺作となった「レクイエム」など、重要な作品が多く存在します。また、ピアノ独奏曲や2台ピアノのための作品も残しており、その創作は幅広いジャンルに及びました。彼の音楽は、時に大規模な編成を用い、力強く叙情的な旋律を持つことで知られています。

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