ジョー・ピサーシック

ジョー・ピサーシック：激動のフットボール人生と「メドウランズの奇跡」

ジョー・ピサーシック（Joe Pisarcik、1952年7月2日 - ）は、アメリカ合衆国ペンシルベニア州キングストン出身の元アメリカンフットボール選手です。クォーターバック（QB）として、そのキャリアをCFL（カナディアン・フットボール・リーグ）のカルガリー・スタンピーダーズでスタートさせ、その後NFL（ナショナル・フットボール・リーグ）のニューヨーク・ジャイアンツ、フィラデルフィア・イーグルスでプレーしました。

プロ入りとジャイアンツ時代

ニューメキシコ州立大学卒業後、1974年から1976年までCFLで活躍したピサーシックは、1977年にNFLのニューヨーク・ジャイアンツに加入しました。当時、デンバー・ブロンコスへ移籍したクレイグ・モートンの後を継ぎ、先発QBの座を掴みます。しかし、ジャイアンツでの先発27試合で19敗と苦戦を強いられました。

「メドウランズの奇跡」

彼のキャリアにおいて最も語り継がれているのは、1978年11月19日に行われたフィラデルフィア・イーグルス戦で起こった「メドウランズの奇跡（The Miracle at the Meadowlands）」でしょう。この試合、ピサーシックは2つのタッチダウンパスを成功させ、第4クォーター残り31秒、17-12とジャイアンツがリードしていました。イーグルスはタイムアウトを使い果たしており、ジャイアンツがボールを保持し時間を消費すれば勝利は目前でした。

しかし、攻撃コーディネーターのボブ・ギブソンは、フルバックのラリー・ゾンカにボールを渡すプレーを選択します。一方、イーグルスの守備コーディネーター、マリオン・キャンベルは、全員でのブリッツを指示しました。このプレーで、ピサーシックからゾンカへのハンドオフが乱れ、ボールをファンブル。これをイーグルスのハーマン・エドワーズが拾い上げ、タッチダウンを奪い、イーグルスが劇的な逆転勝利を収めました。

この予想外の敗北は、ジャイアンツに大きな衝撃を与えました。プロフットボール殿堂入りを果たした当時ジャイアンツのラインバッカー、ハリー・カーソンは、ディフェンス陣のほとんどが勝利を確信し、最後のプレーを見ていなかったと語っています。試合後、ジャイアンツのロッカールームは10分以上もの間、静寂に包まれたそうです。この試合後、ギブソン攻撃コーディネーターは解雇され、ヘッドコーチのジョン・マクベイもシーズン終了後にチームを去ることとなりました。

対照的に、勝利したイーグルスは9勝7敗でシーズンを終え、プレーオフに進出。さらに2シーズン後にはスーパーボウル出場を果たしました。「メドウランズの奇跡」は、両チームの運命を大きく左右する出来事となったのです。

イーグルス時代と引退

1979年シーズン終了後、ピサーシックはジャイアンツからフィラデルフィア・イーグルスにトレードされました。第15回スーパーボウルでは、ロン・ジャウォースキーの控えQBとして出場機会を待ちましたが、目立った活躍は見られませんでした。1984年を最後に現役を引退し、そのフットボール人生に幕を閉じました。

ジョー・ピサーシックのキャリアは、「メドウランズの奇跡」という不運な出来事によって強く記憶されています。しかし、彼はプロのアスリートとして、常に全力を尽くし、チームのために戦い続けました。彼の経験は、勝利の脆さ、そして一瞬の出来事がいかに人の運命を左右するかを物語っています。

外部リンク

通算成績と情報 NFL.com, or Pro-Football-Reference （英語）
30 years later, Giant disappointment of 'The Fumble' still lingers
New York Giants Nov. 19, 1978 （英語）
ジョー・ピサーシック - IMDb（英語）

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