ジル・ブラス

ジル・ブラス (Gil Blas)

『ジル・ブラス』は、19世紀末から20世紀初頭にかけてパリで発行された定期刊行の文芸誌です。1879年11月に、ジャーナリストであり事業家でもあったオーギュスト・デュモンによって創刊されました。誌名は、アラン＝ルネ・ルサージュの小説『ジル・ブラース物語』に由来します。

概要

この雑誌の大きな特徴は、書籍として出版される前に、『ジル・ブラス』で連載された小説が数多く存在することです。例えば、エミール・ゾラの『ジェルミナール』や『制作』などがその代表例です。また、ギ・ド・モーパッサンの短編小説も定期的に掲載されていました。美しい挿絵や質の高い劇評も、『ジル・ブラス』の魅力の一つでした。

作品を掲載した人物としては、演劇評論家のルネ・ブルム、詩人のアレクサンドル・ボグダン＝ピテシュティ、作家のアベル・エルマンなどが挙げられます。挿絵は、テオフィル・スタンランやアルベール・ギョームといった著名な画家が担当しました。

『ジル・ブラス』は1914年まで定期的に発行されていましたが、第一次世界大戦の勃発により休刊となりました。その後、1938年まで継続的に発刊されました。

ジル・ブラスにまつわる逸話

『ジル・ブラス』には、美術史に残る有名なエピソードがあります。20世紀初頭に起こった美術運動「フォービズム（野獣派）」の名称は、1905年のサロン・ドートンヌにおけるアンリ・マティスらの作品を見た、当時の『ジル・ブラス』の評論家ルイ・ヴォークセルの評に由来します。彼はマティスらの作品を見て「まるで野獣（フォーヴ）の檻の中にいるようだ」と評しました。このコメントは1905年10月17日の『ジル・ブラス』の記事となり、フォービズムという名称が一般的に使われるようになったのです。

また、1887年には、劇作家ヴィクトリアン・サルドゥーのオペラ『La Tosca』の通し稽古を見た記者が、初演の朝にそのプロットを掲載したことがありました。これに対し、サルドゥーは損害賠償の訴訟を起こしました。

1888年には、『ジル・ブラス』に掲載された小説が「公共の道徳に反している」として、作家のカミーユ・ルモニエが起訴され、罰金刑を受けるという事件も起きました。

掲載された主な小説

エミール・ゾラ
『金（かね）』 (L'Argent : 1891年)
『ボヌール・デ・ダム百貨店』 (Au Bonheur des Dames: 1883年)
『生きる歓び』 (La Joie de Vivre: 1884年)
『大地』 (La Terre: 1887年)
ギ・ド・モーパッサン
『オルラ』 (Le Horla)
『軽はずみ』 (Imprudence)
『ベロムとっさんのけだもの』 (La bête à maît' Belhomme)
L'Inconnue
モーリス・ルブラン
『ある女』 (Une femme: 1893年)

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