ジロラモ・サヴォナローラ

ジローラモ・サヴォナローラ：フィレンツェを揺るがした情熱の説教者

ジローラモ・サヴォナローラ（1452年9月21日 - 1498年5月23日）は、ルネサンス期のイタリア、特にフィレンツェで大きな影響力を持ったドミニコ会修道士です。彼はその激しい説教と、既成の権威への批判によって、フィレンツェ市民を熱狂させました。彼の活動は、宗教改革の先駆と評価されることもあります。

生涯

サヴォナローラは、フェラーラの中流階級に生まれました。祖父は著名な医師であり、叔父は占星術師という、学問的な環境で育ちました。父の意向で医学を志し、大学で芸術の学位を取得しましたが、ファエンツァでの説教に感銘を受け、22歳でドミニコ会に入信し修道士となりました。

1482年、フィレンツェのサン・マルコ修道院に転任し、後に修道院長となります。そこで彼は、説教を通してフィレンツェの腐敗とメディチ家の支配を厳しく批判し、人々に信仰への回帰を訴えました。サヴォナローラの説教は、当時の印刷技術の発展にも後押しされ、多くの人々に広まりました。メディチ家の当主ロレンツォ・デ・メディチも、死の直前に彼を招いて罪を告白したという逸話も残っています（ただし、捏造の可能性も指摘されています）。

1494年、フランス軍がイタリアに侵攻すると、サヴォナローラはそれを予言していたとされ、人々の支持をさらに集めました。メディチ家が追放されると、サヴォナローラはフィレンツェ共和国の政治顧問となり、事実上の指導者として神権政治を始めました。

しかし、その厳格な政策は人々の不満を招き、「虚栄の焼却」と呼ばれる、贅沢品や芸術品を焼却する行為は、芸術家ボッティチェッリにも影響を与えました。

教皇アレクサンデル6世との対立も深まり、サヴォナローラは破門されてしまいます。1498年、彼は「火の試練」に挑戦することになりますが、対立するフランチェスコ会が怖気づき、実行されませんでした。その後、暴徒化した市民がサン・マルコ修道院に押し寄せ、サヴォナローラは拘束され、異端として処刑されました。彼の最期の言葉は、「わが主は、わがすべての罪のために死にたもうた。私はこの貧しき生命を喜んで彼に献ぐべきではないだろうか」というものでした。

彼の遺体は焼かれ、灰はアルノ川に投げ捨てられました。

評価

サヴォナローラがフィレンツェで熱狂的な支持を得た背景には、以下のような要因がありました。

シャルル8世のイタリア侵入を予言したと信じられたこと
フランス軍がメディチ家追放に貢献し、サヴォナローラの要請でフィレンツェから撤退したこと
平民派との協調により、政治的な影響力を強めたこと

ランケは、サヴォナローラが政治から距離を置こうとしたが巻き込まれ、その中で反教皇・ヨーロッパ諸国の君主による一般宗教会議の招集という構想が芽生えたと述べています。

遺産

サヴォナローラは、ウィクリフ、ヤン・フスとともに、宗教改革の先駆者とみなされています。ルターも彼を高く評価し、「反キリストは、この偉大な人物の記憶が消え去り、また呪われることを願った。しかしながら、見よ、彼は生きており、その記憶は祝福されている」と述べています。

フィレンツェのサン・マルコ美術館には、サヴォナローラの遺品とされる品々が展示されています。特に「サヴォナローラの小部屋」と呼ばれる場所には、彼の信仰と生活を偲ばせる品々が残されています。中でも、ドミニコ会の黒いマントは、彼の象徴的な遺品として知られています。

著作

説教 (1495年)
神愛兄弟会会則 (1497年)
ルネサンス・フィレンツェ統治論―説教と論文
クリスト信徒の質素な生き方
天啓大要
〈出家〉をめぐる詩と手紙―ルネサンス・イタリアにおける〈政治的〉修道士の胎動―

参考文献

サヴォナローラ略伝 (1893)
宗教界の三偉人 (1905)
サボナローラ (1922)
サヴォナローラ (1962)
サヴォナローラ イタリア・ルネサンスの政治と宗教 (1987)
ルネサンス・フィレンツェ,イタリア,ヨーロッパ サヴォナローラ,マキャヴェッリの時代,生涯 読む年表・年譜 (2002)
フィレンツェ: 初期ルネサンス美術の運命 (1996)
印刷という革命――ルネサンスの本と日常生活―― (2015)

関連項目

メディチ家
* イタリア戦争

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