ジンバブエの紙幣

ジンバブエの紙幣は、ジンバブエ準備銀行が発行するジンバブエ・ドルと、現在流通しているRTGSドルについて解説します。

概要

ジンバブエの紙幣は、1980年の建国時にローデシア・ドルに代わって導入されました。1990年代までは比較的安定した経済状況でしたが、その後ハイパーインフレーションに見舞われ、度重なるデノミネーションを余儀なくされました。

紙幣のデザインには、他の多くの国とは異なり、歴史上の偉人や国家元首は登場せず、代わりに「バランスロックス」と呼ばれる奇岩が表面に必ず描かれています。裏面には、首都ハラレやカリバダムの風景、動物などが描かれています。

ハイパーインフレにより、天文学的な額面の紙幣が発行され、その対応としてデノミネーションが繰り返されました。2009年には90種類もの紙幣が発行され、以前のデザインの色や額面を変更したものが多く見られました。

以下に、発行された紙幣のシリーズについて詳しく解説します。

第一シリーズ（1980年 - 2006年）

1980年に導入されたジンバブエ・ドルは、ローデシア・ドルと等価で交換されました。当初は緩やかなインフレでしたが、ロバート・ムガベ政権下の経済政策の失敗から、ハイパーインフレに陥りました。

発行された紙幣の主な種類は以下の通りです。

1980年 - 1994年
2ジンバブエ・ドル (1980-1984)
5ジンバブエ・ドル (1980-1994)
10ジンバブエ・ドル
20ジンバブエ・ドル
1994年 - 2003年
5ジンバブエ・ドル (1997)
10ジンバブエ・ドル (1997)
20ジンバブエ・ドル (1997)
50ジンバブエ・ドル (1994)
100ジンバブエ・ドル (1995)
500ジンバブエ・ドル (2001)
1000ジンバブエ・ドル (2003)

2003年頃からインフレが激化し、紙幣の代わりに持参人払式小切手が発行されるようになりました。

第二シリーズ（2006年）

2006年8月1日には、デノミネーションが実施され、ジンバブエ・ドルは3桁切り捨てられました。しかし、インフレは収まらず、高額紙幣が次々と発行されました。

発行された紙幣の種類は以下の通りです。

1セント
5セント
10セント
50セント
1ジンバブエ・ドル
5ジンバブエ・ドル
10ジンバブエ・ドル
20ジンバブエ・ドル
50ジンバブエ・ドル
100ジンバブエ・ドル
500ジンバブエ・ドル
1000ジンバブエ・ドル
5000ジンバブエ・ドル
10,000ジンバブエ・ドル
50,000ジンバブエ・ドル
100,000ジンバブエ・ドル
200,000ジンバブエ・ドル
250,000ジンバブエ・ドル
500,000ジンバブエ・ドル
750,000ジンバブエ・ドル
1,000,000ジンバブエ・ドル
5,000,000ジンバブエ・ドル
10,000,000ジンバブエ・ドル
25,000,000ジンバブエ・ドル
50,000,000ジンバブエ・ドル
100,000,000ジンバブエ・ドル
250,000,000ジンバブエ・ドル
500,000,000ジンバブエ・ドル
5,000,000,000ジンバブエ・ドル
25,000,000,000ジンバブエ・ドル
50,000,000,000ジンバブエ・ドル
100,000,000,000ジンバブエ・ドル

第三シリーズ（2008年）

2008年8月1日には、再びデノミネーションが行われ、ジンバブエ・ドルは10桁切り捨てられました。しかし、依然としてインフレは収まらず、最終的には「100兆ドル紙幣」という天文学的な数字の紙幣が発行されるに至りました。

ジンバブエ準備銀行の総裁であるギデオン・ゴノは、この一連の出来事により、2009年にイグノーベル賞を受賞しました。また、2015年から2017年にかけて、イグノーベル賞受賞者への賞金として10兆ジンバブエ・ドル紙幣が授与されていたそうです。

100兆ドル紙幣は、日本の国立印刷局が運営するお札と切手の博物館に展示されています。

発行された紙幣の種類は以下の通りです。

1ジンバブエ・ドル
5ジンバブエ・ドル
10ジンバブエ・ドル
20ジンバブエ・ドル
50ジンバブエ・ドル
100ジンバブエ・ドル
500ジンバブエ・ドル
1000ジンバブエ・ドル
5000ジンバブエ・ドル
10,000ジンバブエ・ドル
20,000ジンバブエ・ドル
50,000ジンバブエ・ドル
100,000ジンバブエ・ドル
500,000ジンバブエ・ドル
1,000,000ジンバブエ・ドル
10,000,000ジンバブエ・ドル
50,000,000ジンバブエ・ドル
100,000,000ジンバブエ・ドル
200,000,000ジンバブエ・ドル
500,000,000ジンバブエ・ドル
1,000,000,000ジンバブエ・ドル
5,000,000,000ジンバブエ・ドル
10,000,000,000ジンバブエ・ドル
20,000,000,000ジンバブエ・ドル
50,000,000,000ジンバブエ・ドル
10,000,000,000,000ジンバブエ・ドル
20,000,000,000,000ジンバブエ・ドル
50,000,000,000,000ジンバブエ・ドル
100,000,000,000,000ジンバブエ・ドル

第四シリーズ（2009年）

2009年2月2日には、1兆ジンバブエ・ドルを「新1ジンバブエ・ドル」とする12桁のデノミネーションが実施されました。しかし、実際には市場に流通することはありませんでした。ジンバブエ中央銀行総裁は、経済成長率が年7％を超えない限り、ジンバブエ・ドルの再導入はしないと発表しました。

発行された紙幣の種類は以下の通りです。

1ジンバブエ・ドル
5ジンバブエ・ドル
10ジンバブエ・ドル
20ジンバブエ・ドル
50ジンバブエ・ドル
100ジンバブエ・ドル
500ジンバブエ・ドル

ボンドノート

2016年11月からは、数年間暫定的に代理通貨としてボンドノートが発行されましたが、成功しませんでした。

RTGSドル

詳細は「RTGSドル」を参照してください。
2020年現在の通貨ですが、こちらも大規模なインフレーションが続いています。

参考文献

Standard Catalog Of World Paper Money: Modern Issues - 1961-present (Standard Catalog of World Paper Money. Vol 3: Modern Issues) Krause publications

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