ジークムント・イェーン

ジークムント・イェーン：東ドイツ初の宇宙飛行士

ジークムント・ヴェルナー・パウル・イェーン（Sigmund Werner Paul Jähn）は、1937年2月13日に生まれ、2019年9月21日に82歳でこの世を去りました。彼は、ドイツ民主共和国（東ドイツ）の軍人であり、宇宙飛行士として、ドイツ人として初めて宇宙へ足跡を残した人物です。

生い立ちと軍歴

イェーンは、ナチス・ドイツ時代のザクセン州で生まれ育ちました。印刷職人としての訓練を受けた後、1955年に国家人民軍航空軍の前身である航空人民警察に入隊。1958年には空軍士官学校を卒業し、軍人としてのキャリアをスタートさせました。

その後、彼はソ連に留学し、1966年から1970年までモニノのガガーリン空軍アカデミーでパイロットとしての教育を受けました。そのため、彼の肖像写真では、東ドイツの国家人民軍ではなく、ソ連軍のパイロット資格章を着用している姿が確認できます。

宇宙飛行士への道

1976年、イェーンは予備パイロットのエベルハルト・ケルナーと共に、インターコスモス計画の最初の宇宙飛行士に選ばれました。彼はモスクワ郊外の星の街で2年間の厳しい訓練を受け、宇宙飛行士としての準備を整えました。

1978年8月26日、ソ連のソユーズ31号に搭乗し、ついに宇宙へ飛び立ちました。サリュート6号宇宙ステーションでの任務を終え、ソユーズ29号で地球に帰還するまでの7日と20時間49分間、彼は宇宙空間での貴重な経験を積みました。

研究者、そして東西ドイツ統一後

宇宙飛行士としての活動後、イェーンは研究者としても活躍しました。1983年には、ポツダムの地球物理学中央研究所で地球の遠隔探査をテーマとした論文を作成し、物理学の博士号を取得しています。

軍人としては少将の階級まで昇進し、1990年10月2日に退役しました。これは、東西ドイツ統一の前日のことでした。彼の功績を称え、小惑星には彼の名前が冠されています。

東西ドイツ統一後、イェーンはDLR（ドイツ航空宇宙センター）のフリーランスコンサルタントとして活動し、1993年からは欧州宇宙機関でユーロミール計画の準備にも携わりました。2002年にこの職からも退き、静かな生活を送りました。

私生活と栄誉

イェーンは結婚しており、2人の子供がいます。趣味は読書と狩猟であり、著書に「宇宙空間の開拓」（1983年）があります。彼は、「カール・マルクス勲章」や英雄称号「ドイツ民主共和国英雄」、名誉称号「ドイツ民主共和国宇宙飛行士」など、数々の栄誉を受章しています。また、ソ連邦英雄、レーニン勲章も受章しており、統一後のベルリンの名誉市民でもありました。

映画への登場

イェーンは、映画『グッバイ、レーニン!』（2003年）にも登場します。作中では、ドイツ統一後の世界で職を失い、タクシー運転手になっているという設定で描かれています（ただし、これは史実とは異なります）。

ジークムント・イェーンは、東ドイツ初の宇宙飛行士として、その名と功績は永遠に語り継がれるでしょう。

もう一度検索