スイス連邦憲法

スイス連邦憲法

スイス連邦憲法は、スイス連邦の統治の基礎となる憲法であり、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語でそれぞれ表記されます。

概要

この憲法は、スイス連邦を26の州（カントン）から構成される連邦共和国と規定し、国民投票を通じた連邦法や憲法改正の権利など、国民の権利を保障しています。また、州と連邦政府の責任範囲を明確に定め、連邦政府の機関について規定しています。

現行憲法は1999年4月18日の国民投票で承認され、それまで施行されていた1874年5月29日憲法を全面的に改正する形で、2000年1月1日に施行されました。この改正は、憲法の本質的な部分を変えることなく、時代の変化に対応することを目的としていました。

歴史

現行憲法の基礎は、フランス革命の思想に影響を受けた1848年9月12日憲法によって築かれました。この1848年憲法は、分離同盟戦争の結果として制定されたもので、連邦憲法に抵触しない範囲で各州に主権を認めました。

1848年憲法は1866年に部分的に改正され、1874年には全面改正が行われました。この改正で、連邦レベルでの国民投票制度が導入されました。1891年初頭には、一定数の有権者が憲法条項の改正や新設を請求できる「イニシアティブ権」が導入され、憲法の部分改正が容易になりました。

1990年代には2度目の全面改正が行われ、1999年4月18日の国民投票と各州の投票を経て新憲法（現行憲法）が成立、2000年1月1日に施行されました。この新憲法では、それまで連邦裁判所でのみ議論されていた9つの人権が明記されました。

国民発議（イニシアティブ）とそれに対する反対提案により、スイス憲法は頻繁に改正されています。1874年憲法は140回以上の部分改正が行われ、現行憲法も同様に、年に1回以上のペースで部分改正が行われると予想されています。2003年時点で既に6回の改正が行われています。

構成

スイス連邦憲法は、以下の構成となっています。

前文
第1編：総則
第2編：基本権、市民権及び社会目標
第1章：基本権
第2章：市民権及び政治的権利
第3章：社会目標
第3編：連邦、州及び市町村
第1章：連邦と州との関係
第1節：連邦及び州の任務
第2節：連邦及び州の協力
第3節：市町村
第4節：連邦保障
第2章：権限
第1節：対外関係
第2節：安全、国防、民間防衛
第3節：教育、研究及び文化
第4節：環境及び国土計画
第5節：公共事業及び交通
第6節：エネルギー及び通信
第7節：経済
第8節：住居、労働、社会保障及び健康
第9節：外国人の滞在及び定住
第10節：民法、刑法、度量衡
第3章：財政制度
第4編：国民及び州
第1章：総則
第2章：国民発案及び国民投票
第5編：連邦機関
第1章：総則
第2章：連邦議会
第1節：組織
第2節：手続
第3節：権限
第3章：連邦参事会及び連邦行政
第1節：組織及び手続
第2節：権限
第4章：連邦裁判所及びその他の裁判機関
第6編：連邦憲法の改正及び経過規定
第1章：改正
第2章：経過規定

前文と第1編

前文と第1編は、法の支配に基づいた、26の州からなる民主的な連邦共和制という、国の基本的な枠組みを定めています。前文は、スイス憲法の伝統を受け継ぎ、神への言及から始まります。ここでは、連邦憲法の制定者であるスイス国民と各州の意志として、「自由と民主主義、世界に対する連帯と公開性の中での独立と平和」という価値観を尊重することが表明されています。

第1編（1条から6条）の総則では、連邦、州、基礎自治体の特徴が定められています。連邦を構成する州が列挙され、憲法の範囲内における州の主権が明示され、公用語としてドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語が列挙されています。また、法の支配、比例原則、信義誠実の原則、国際法遵守の原則が国に義務付けられ、最後に国民の責任について言及されています。

第2編：基本権、市民権及び社会目標

第2編は、人権に関する規定です。1874年憲法で定められた人権は限定的であり、20世紀以降に重要性を失った規定も存在しました。そのため、連邦裁判所の判例を通じて、多くの潜在的な人権や慣習上の人権が発展しました。この過程で、欧州人権裁判所の判例や、スイスが1974年に批准した欧州人権条約で保障されている人権が考慮されました。

1999年の憲法改正では、連邦議会はこれらの判例を、世界人権宣言や自由権規約で保障された権利と整合性のある包括的な権利の目録として成文化することを決定しました。

第2編はまた、スイスの市民権の取得や参政権の行使に関する基本的なルールも規定しています。さらに、社会保障や医療、住宅の確保といった、政府が守るべき「社会目標」も規定されています。

第3編：連邦、州及び自治体

第3編では、連邦と州の関係や権限について規定しています。

第4編：国民及び州

第4編では、国民投票やイニシアティブについて規定しています。

第5編：連邦官庁

第5編では、連邦議会、連邦参事会、連邦裁判所といった連邦官庁について規定しています。

第6編：連邦憲法の改正及び経過規定

第6編では、憲法改正の手続きや経過規定について規定しています。

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