スウェーデン文学

スウェーデン 文学：ヴァイキング時代のルーンから現代ポップスまで

スウェーデン文学は、古くはヴァイキング時代の800年頃、レーク石碑に刻まれたルーン文字にその起源を見出します。この最古の文学的資料は、歴史的事実だけでなく、サガや伝説の断片を含む詩的な要素も持ち、スウェーデン文学の黎明を示唆しています。しかし、1100年頃からのキリスト教化によってラテン語が優勢となり、古スウェーデン語の文献は限られていました。

中世から宗教改革期

スウェーデンのキリスト教化は、文学にも大きな影響を与えました。非キリスト教的な英雄神話がどのようにキリスト教的価値観に置き換えられていったかを示す例として、イェーク石碑が挙げられます。この石碑には、古代のシンボルとキリスト教の十字架が混在しており、古代信仰の痕跡が徐々に消えつつあった様子を物語っています。中世のスウェーデンでは、文学的規範は主に外国、特にヨーロッパ大陸から輸入され、残された文献もラテン語による神学的なものや法律文書が中心でした。15世紀後半にはスウェーデン語で書かれた書物が現れ始めますが、数は限られていました。

16世紀の宗教改革は、スウェーデン文学に転機をもたらします。1541年にスウェーデン語に翻訳されたグスタフ1世聖書は、スウェーデン語の標準化に大きく貢献し、文学の発展を促進しました。しかし、グスタフ1世による出版物の検閲は、文学の自由な発展を阻害する要因にもなりました。

17世紀・18世紀：ルネサンスと啓蒙

17世紀には、ゲオルク・シェルンイェルムがスウェーデン語で最初の古典詩を書き、スウェーデン語の文学表現の可能性を広げました。18世紀の「自由の時代」は、啓蒙思想の影響を受け、出版の自由が認められたことで、文学の発展に弾みをつけました。オロフ・フォン・ダリンは、風刺と皮肉を交えたユーモラスな表現で、スウェーデンの文化と歴史を描写し、スウェーデン語を大衆に届けることに成功しました。カール・フォン・リンネは植物学者としてだけでなく、スウェーデン語で一般向けに著作を執筆した先駆者の一人でした。さらに、ヨハン・ヘンリック・ケルグレンとカール・ミカエル・ベルマンは、詩人として活躍しました。

19世紀：ロマン主義とリアリズム

19世紀前半はロマン主義の時代でした。ドイツロマン主義の影響を受け、多くの偉大な詩人が登場し、スウェーデン詩の黄金時代と呼ばれています。この時代には、エリック・グスタフ・ガイエル、エリック・ヨハン・スタグネリウス、エサイアス・テングネール、ペール・ダニエル・アマデウス・アッテルブムといった詩人が活躍しました。

19世紀後半には、自然主義または写実主義の文学が台頭します。ヨハン・アウグスト・ストリンドベリは、社会批判的な作品で国際的な名声を博し、劇作家、小説家としてスウェーデン文学に大きな影響を与えました。セルマ・ラーゲルレーヴ、ヴィクトリア・ベネディクトソンなども、この時代の重要な作家です。また、この時代には、「90年代詩人」と呼ばれる詩人たち、特にセルマ・ラーゲルレーヴが活躍しました。

20世紀：モダニズムとそれ以降

20世紀に入ると、モダニズムの影響を受けた文学が発展しました。ヤルマール・セーデルベリィは、シニカルでペシミスティックな小説で知られ、特に『グラース博士』は高く評価されています。また、プロレタリア文学では、イヴァル・ロ・ヨハンソン、モア・マーティンソン、ヤン・フリートガード、ヴィルヘルム・ムーベリらが、労働者の生活を描いた作品を発表しました。ムーベリの『移民者たち』は、スウェーデン移民の苦悩を描いた傑作として知られています。

児童文学においては、アストリッド・リンドグレーンが『長くつ下のピッピ』などの作品で世界的な人気を得ました。彼女の作品は、子どもたちの想像力と冒険心を刺激し、児童文学のあり方に大きな影響を与えました。トーベ・ヤンソンもフィンランドのスウェーデン語作家として『ムーミン』シリーズで知られています。

探偵小説では、ヘニング・マンケル、スティーグ・ラーソンらが国際的な成功を収めました。マンケルの『クルト・ヴァランダー』シリーズは、社会問題をテーマに取り上げた作品として高く評価されています。

詩においては、ヒャルマル・グリルベリ、グンナル・エケレフ、ハリー・マーティンソン、トーマス・トランストロンメルらが、それぞれ独自の手法で詩作を行い、スウェーデン詩壇をリードしました。また、ポップミュージックの歌詞にも文学的な要素が見られるようになり、ミカイエル・ヴィーエ、ウルフ・ルンデルといったアーティストが、社会的なメッセージを含む歌詞を創作しました。

ノーベル文学賞受賞者

スウェーデンからは、セルマ・ラーゲルレーヴ、ヴェルネル・フォン・ヘイデンスタム、エリク・アクセル・カールフェルト、ペール・ラーゲルクヴィスト、エイヴィンド・ユーンソン、ハリー・マーティンソン、トーマス・トランストロンメルがノーベル文学賞を受賞しています。

まとめ

スウェーデン文学は、古くからの伝統と現代的な感性が融合した、豊かな文学です。ルーン石碑から現代のポップミュージックまで、その歴史は多様性に満ち、世界中に影響を与え続けています。今後も、スウェーデン文学から目が離せません。

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