スカルナテ・プレソ天文台

スロバキアのタトラ山脈に位置するスカルナテ・プレソ天文台は、標高1,786mの地点に建てられた天文観測施設です。その歴史は1943年に遡り、以来、天文学の分野で重要な貢献を果たしてきました。特に、彗星の捜索や詳細な星図の作成で国際的な名声を確立し、現在も研究活動を続けています。

立地と環境

天文台は、タトラ山脈のロムニツキー・シュティート山の東斜面に位置し、「岩だらけの湖」を意味するスカルナテ・プレソ湖のそばにあります。この高地は、天体観測に非常に適しており、ケーブルカーが麓のタトランスカ・ロムニツァと山頂を結んでいるため、アクセスも容易です。

歴史

当初、スロバキアの国立天文台は南部のスタラ・ジャラにありましたが、ウィーン裁定により移転を余儀なくされました。当時最大口径の望遠鏡はプレショフに移され、その後、気候学者であったアントニーン・ベチュヴァーシュが、スカルナテ・プレソへの天文台建設を提案し、実現しました。高地への設置とケーブルカーの存在が、この場所の選定に大きく影響しました。

1943年、天文台は建設され、スタラ・ジャラから移設された60cm反射[[望遠鏡]]で最初の観測が行われました。ベチュヴァーシュが初代天文台長に就任しましたが、第二次世界大戦中にドイツ軍の破壊目標となり、一時は観測が中断されました。しかし、ベチュヴァーシュの説得と悪天候によって破壊は免れ、その後も観測を続けることができました。

1950年代には、組織体制が幾度か変更され、最終的にスロヴァキア科学アカデミーの天文学研究所の一部となりました。後に麓のタトランスカ・ロムニツァに管理棟が設けられ、研究部門の分担化が進みました。1963年にはロムニツキー・シュティート山頂に太陽観測所が設置され、1979年にはスタラ・レスナ天文台の建設が開始されました。1987年に研究所本部がスタラ・レスナに移転したことで、スカルナテ・プレソ天文台は3つの天文台の一つという位置づけになりました。

1960年代以降、観測機器の更新が進められ、光電測光器の導入や新たなアストログラフが設置されました。主力の60cm反射[[望遠鏡]]は、1978年に新しいものに交換され、旧望遠鏡はモドラ天文台へ移されました。2000年には61cm反射[[望遠鏡]]が導入され、2014年には1.3m反射[[望遠鏡]]が設置されるなど、観測能力の向上が図られています。

望遠鏡

現在、天文台で最も大きな望遠鏡は、ASTELCO社製の1.3mナスミス-カセグレン式反射[[望遠鏡]]です。この望遠鏡には、高分散可視光分光器、近赤外線カメラ、大判可視光CCDカメラが搭載されており、観測能力を大きく向上させています。また、スロヴァキア-バイエルン望遠鏡共同研究（SLOBATCO）の一環として、観測装置の開発も進められています。

2番目に大きな望遠鏡は、2000年に導入された61cm反射[[望遠鏡]]で、太陽系小天体の観測に使用されています。

研究分野

スカルナテ・プレソ天文台では、惑星間物質部門と恒星部門が研究活動を行っています。

惑星間物質部門は、太陽系小天体の空間分布や形成、進化を研究し、地球接近天体の研究も行っています。

恒星部門は、変光星の観測研究を主に行い、相互作用連星や新星の研究にも力を入れています。近年では、太陽系外惑星の捜索も行っています。

主な業績

スカルナテ・プレソ天文台の業績として特に有名なのは、星図の作成と彗星の発見です。

スカルナテ・プレソ星図

アントニーン・ベチュヴァーシュとその共同研究者たちは、1946年から1948年にかけて『スカルナテ・プレソ星図』を作成しました。この星図は、小型望遠鏡で見える星雲や星団、銀河が詳細に記載されており、彗星捜索者にとって必須のアイテムとして世界中で利用されました。その影響は大きく、多くの天文星図の基盤となっています。

彗星捜索

第二次世界大戦後、天文台は計画的に彗星捜索に取り組み、1946年から1959年の間に18個もの彗星を発見・再発見しました。この期間に全世界で発見された彗星の数が70個であることを考えると、その成果は非常に大きいと言えるでしょう。主な彗星としては、本田・ムルコス・パイドゥシャーコヴァー彗星、タットル・ジャコビニ・クレサーク彗星（再発見）、ムルコス彗星などが挙げられます。

その他の観測

初期から、流星撮影用のカメラが備えられており、1945年にはこぐま座流星群の大出現を記録しました。現在も、欧州火球ネットワークに参加し、流星の監視を行っています。また、小惑星スロヴァキアやタトリなどがここで発見されました。

太陽観測は、天文台で最も早く始まった観測であり、多くのデータが保管されています。しかし、スタラ・レスナやロムニツキー・シュティートに太陽観測設備が充実したため、現在は行われていません。

その他

スカルナテ・プレソ天文台は、スロヴァキア科学アカデミー地球科学研究所の気象観測所としても機能しており、1939年から気象観測が行われています。1979年に発見された小惑星2619番は、「スカルナテ・プレソ」と命名されています。また、天文台は、独自の査読付き英文学術雑誌を発行しており、その貢献は多岐にわたります。

このように、スカルナテ・プレソ天文台は、その設立から現在に至るまで、天文学の発展に大きく貢献し続けている重要な施設です。

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