スガワラビランジ

スガワラビランジ (Silene stenophylla)

スガワラビランジは、ナデシコ科に属するマンテマ属の被子植物で、極東シベリアのツンドラ地域に自生しています。この植物は通常、5cmから25cmの高さで成長し、細長い葉と特有の大きな萼を持っています。夏に開花し、その花弁は薄紫や白の色を帯びており、割れ目があるのが特徴です。スガワラビランジは、北アメリカに達することなく、ベーリング地峡の近くに生息する数少ない植物種の一つです。

凍結した種の発見

スガワラビランジに関する重要な発見は、2007年に遡ります。この年、シベリアのコルィマ鉱山で、凍結した種子が当時の地層から掘り出され、放射性炭素年代測定の結果、これが約2万年前から4万年前のものとされたのです。発見された種子は、恐らくジリスによって地面に埋められたもので、その傷ついた胚も同様にジリスの仕業であったと考えられています。

再生の試み

2012年、ロシア科学アカデミーの細胞生物物理学研究所に所属する研究チームは、31,800年前から凍結していたスガワラビランジの果実からの植物組織培養に成功したと報告しました。この場合、依然として第三者による検証が行われていないことから、古代種の再生に関する過去の報告も、科学的に厳密であるとは言い難い部分があるとされます。しかし、この成功が本当であれば、ナツメヤシの種子を再生させた記録を超え、地球上で最も古い植物再生の実績となります。

リーダーを務めたデビッド・ギリチェンスキーは、約70ヶ所に及ぶジリスの巣穴から収集したサンプルを使用しました。これらの巣穴はコリマ川下流、特にDuvanny Yarの近くに位置しており、20～40メートルも地表から埋まっていました。研究グループによると、「これらの化石化した巣穴とその中身は、埋められてから一度も解凍されることはなかった」とされています。果実は埋葬後、まもなく氷結したと考えられており、これは局地的な気候変化によるものかもしれません。

成長の過程

研究当初、チームは取り出した成熟した種子を使っての発芽実験を試みましたが、うまくいきませんでした。そこで果実そのものを利用する試みへとシフトし、胎座から成体を育てることに成功しました。結果として、36個の植物標本を育てあげたのです。開花までの外見は現代のスガワラビランジと似ていたものの、花弁の長さやその間隔には違いが認められました。一般的に現代のスガワラビランジから得られる種子の発芽率は90%ですが、過去の標本のものは100%だったという結果も注目に値します。

今後の研究への期待

ミレニアム・シード・バンク・プロジェクトのロビン・プロバート氏は、この研究の成果が非常に古い植物標本に基づいていることは非常に珍しいとし、開発された技術が将来的には絶滅した植物の再生に役立つ可能性があるとの期待を寄せています。ロシアの科学者たちは、果実の組織細胞がスクロースを多く含んでいたことが貯蔵に寄与したと考えており、当時のガンマ線の影響が現在と比べて少なかった点も指摘しています。

古生物学者のグラント・ザズラは、これまで古代種の再生に消極的だったものの、今回の成果は永久凍土層における古代生物の生育可能性について再考するきっかけを提供したとして、報告の信ぴょう性に異議はないと強調しています。

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