スキャンダル 京大西部講堂1982

アルバム概要

『スキャンダル 京大西部講堂1982』は、孤高のシンガー、浅川マキが1982年に京都大学西部講堂で開催したパフォーマンスの模様を捉えたライブ録音盤です。この作品は、一般的な音楽レーベルからではなく、長年にわたり浅川マキのコンサートを主催してきた京都のライブハウス「ピッグノーズ」が中心となって制作され、2011年9月29日にピッグノーズレコードから発売されました。

特徴と背景

本作は、1982年、多くのアーティストが歴史に残るパフォーマンスを繰り広げたことでも知られる京都大学西部講堂で行われた浅川マキのライブから、厳選された7曲と語りを収録しています。

このアルバムの最大の特徴の一つは、そのリリース元にあります。浅川マキが生前に所属していた大手レコード会社であるEMIミュージック・ジャパン（現：ユニバーサルミュージック合同会社内EMIレコーズ・ジャパンレーベル）ではなく、浅川マキと1972年から2009年まで実に長きにわたり、深い信頼関係を築きながらそのコンサート活動を支え続けた京都のライブハウス「ピッグノーズ」の手によって世に出されました。これは、単なる音楽作品のリリースを超えた、浅川マキと「ピッグノーズ」との特別な絆を示すものと言えるでしょう。

収録された音源の一部は、すでに別のライブアルバム『夜のカーニバル』でも使用されていますが、本作にはそれ以外の貴重なテイクも含まれています。特に、「暗い眼をした女優」「新曲 “B”」「夕暮れのまんなか」といった楽曲は、スタジオアルバム『CAT NAP』として完成する以前の、ライブにおける生々しい演奏を聴くことができる点でも音楽資料として価値が高いと言えます。

発売当初、この作品は公式なカタログに載らない、いわば非公式なリリースという位置づけでした。しかし、その音楽的な重要性やファンからの根強い要望もあり、2022年に発売されたCD BOXセット『浅川マキの世界2 ライヴ・セレクションBOX』の中に正式に収録されることとなりました。BOXに収められた音源は、新たにリマスタリングが施され、よりクリアなサウンドで当時の熱演が蘇っています。

演奏メンバー

このライブを支えたのは、浅川マキのヴォーカルとともに、日本のジャズ、フュージョン、ロックシーンで活躍する錚々たるミュージシャンたちです。トランペットに近藤等則、アルトサックスとフルートに本多俊之、ピアノに渋谷毅、ギターに飛田一男、ベースに川端民生、そしてドラムにはつのだひろという、各パートのスペシャリストたちが集結し、スリリングで創造的なアンサンブルを繰り広げています。彼らの卓越した演奏が、浅川マキの世界観をより深く、そして力強く表現することに貢献しています。

収録曲

DISC1
1. 暗い眼をした女優
作詩：浅川マキ／作曲：近藤等則
（オリジナルはアルバム『CAT NAP』収録）
2. 新曲 “B”
作詩：浅川マキ／作曲：近藤等則
（オリジナルはアルバム『CAT NAP』収録）
3. 夕暮れのまんなか
作詩：山内テツ／作曲：近藤等則
（オリジナルはアルバム『CAT NAP』収録）
4. PIGNOSEと手紙
作詩・作曲：浅川マキ
（オリジナルはアルバム『ONE』収録）

DISC2
1. 都会に雨が降る頃
作詩：浅川マキ／作曲：山下洋輔
（オリジナルはアルバム『ONE』収録）
※一部がライブ・アルバム『夜のカーニバル』にも使用
2. 語り
※一部がライブ・アルバム『夜のカーニバル』にも使用
3. あんな女ははじめてのブルース
作詩：Langston Hughes／作曲：山下洋輔／日本語詞：斎藤忠利
（オリジナルはアルバム『MAKI VI』収録）
4. 翔ばないカラス
作詩：真崎守／作曲：浅川マキ
（オリジナルはアルバム『裏窓』収録）

スタッフクレジット

このアルバムの制作には、柴田徹氏が録音を担当したほか、「ピッグノーズ」がプロデュースを手掛けました。リマスタリングはklt氏、デザインはJeff氏が担当しています。

『スキャンダル 京大西部講堂1982』は、浅川マキという表現者のライブにおける迫力や、彼女を支えた類稀なるミュージシャンたちの才能、そして長年の活動を共に築き上げた「ピッグノーズ」との関係性といった、様々な側面からその芸術性に触れることができる貴重な作品と言えるでしょう。

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