CAT NAP

CAT NAP - 浅川マキ

浅川マキの音楽キャリアにおいて、通算14作目にあたるオリジナルアルバム『CAT NAP』（キャット・ナップ）は、1982年10月21日に東芝EMIのエクスプレス・レーベルからリリースされました。

本作は、トランペット奏者であり、フリー・インプロヴィゼーションの旗手として知られる近藤等則がプロデュースを手掛けたことに大きな特徴があります。さらに、アルバムに収録された全ての楽曲の作曲を近藤等則が担当しており、これは浅川マキの作品としてはユニークな試みでした。当時のキャッチコピーには、「耳許でカンカンと鳴らす。続けて、続けて、するとなにも聞こえなくなってしまう。彼はそう言った。フリー・インプロヴィゼーションの近藤等則、初の全作曲による浅川マキのアルバム。」という印象的なフレーズが掲げられており、その音楽的な方向性を暗示しています。

浅川マキの歌声と近藤等則の音楽性が融合したこのアルバムは、特定のジャンルに囚われない新たな地平を切り拓いた作品と評されています。際立つメロディーラインと、研ぎ澄まされたインプロヴィゼーションが見事に調和し、聴き手に強い印象を与える快作として位置づけられています。

収録曲

本作には以下の楽曲が収録されています。

Side A

1. 暗い眼をした女優
作詩：浅川マキ／作曲：近藤等則
2. 忘れたよ
作詩：浅川マキ／作曲：近藤等則
3. こころ隠して
作詩：浅川マキ／作曲：近藤等則
※9thシングルA面曲ですが、本作にはアルバム・ヴァージョンで収録されています。シングル・ヴァージョンは収録時間の短い編集版です。
4. むかし
作詩：浅川マキ／作曲：近藤等則
※9thシングル「こころ隠して」のB面曲です。

Side B

1. 新曲“B”
作詩：浅川マキ／作曲：近藤等則
2. 夕暮れのまんなか
作詩：山内テツ／作曲：近藤等則
3. マシン (machine)
作曲：近藤等則
4. 今なら
作詩：浅川マキ／作曲：近藤等則

参加ミュージシャン

レコーディングには浅川マキ（ヴォーカル）を中心に、近藤等則（トランペット、トイズ、パーカッション）をはじめとする実力派ミュージシャンが参加しています。

浅川マキ - Vocals
近藤等則 - Trumpet、Toys、Percussion
本多俊之 - A.Sax、Flute
渋谷毅 - Piano
杉本喜代志 - E.Guitar
飛田一夫 - E.Guitar
川端民生 - E.Bass
つのだひろ - Drums

制作クレジット

アルバム制作には以下のスタッフが携わりました。

Producer: 寺本幸司, 柴田徹
Director: 掛一義
Recording & Mixing Engineer: 吉野金次
Second Engineer: 坂元達也
Front Cover Art: 野中ユリ （表紙には野中ユリ氏の作品「苦い薔薇のためのデカルコマニー」が使用されています）
Photographer: 田村仁
Designer: 周東圀夫
その他協力スタッフ：橋本達也、大島則夫、持田昇一、堀井豊二

CD化と復刻

『CAT NAP』は、発売当初はアナログレコードとしてリリースされました。その後、1990年に発売されたCDボックスセット『浅川マキの世界 CD10枚組BOX 自選作品集』の中の一枚として、初めてCD化されました。

単独での初CD化は、2011年の復刻プロジェクトにて実現します。このプロジェクトでは、1970年代のアルバム10作（1月にリリース）に続き、本作を含む1980年代のアルバム14作が、デジタルリマスタリングされた音源で、紙ジャケット仕様にて復刻されました。この紙ジャケットは、オリジナルのLP盤の歌詩カードやレコードレーベルを再現したものでしたが、一部作品では例外や色・紙質の差異が見られます。また、帯については、この紙ジャケットシリーズ用に新たにデザインされたものに統一され、オリジナルレコードの帯は再現されていませんでした。さらに、『WHO'S KNOCKING ON MY DOOR』（1983年）以降の作品でオリジナル盤に付属していた帯代わりのステッカー（シール）も、この復刻では再現されていません。

近藤等則とのコラボレーションにより、浅川マキのヴォーカルが新たなサウンドスケープの中で展開される『CAT NAP』は、彼女のディスコグラフィにおいても挑戦的な一面を示す重要な作品となっています。

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