スクエア・キロメートル・アレイ

スクエア・キロメートル・アレイ（Square Kilometer Array, SKA）

スクエア・キロメートル・アレイ（SKA）は、国際協力のもと、オーストラリアと南アフリカを中心としたアフリカ地域で現在建設が進められている巨大な電波望遠鏡プロジェクトです。その名称が示す通り、合計で1平方キロメートルにも達する広大な電波の集光面積を持つことを目指しており、これによりこれまでにない感度で宇宙からの微弱な電波を捉えることが可能になります。

本プロジェクトは、数千台ものアンテナを広範囲に展開し、それらを連携させて一つの巨大な仮想的な望遠鏡として機能させる電波干渉計の原理を利用しています。アンテナ群が最長3000キロメートル以上にわたって配置されることで、非常に高い解像度を実現し、宇宙の微細な構造まで詳細に観測することができます。

観測対象とする電波の周波数帯は70 MHzから10 GHz（波長4mから3cm）と広帯域に及び、これにより様々な宇宙現象を捉えることが可能です。

望遠鏡の構成

SKAは、観測する電波の周波数に応じて異なるタイプのアンテナを組み合わせて建設されています。比較的高い周波数帯を担当するのは「Dishes」と呼ばれる多数のパラボラアンテナです。これらは口径15メートルのアンテナ約3000台から構成され、個々のアンテナのサイズは突出していませんが、多数を組み合わせることで広い視野角を得つつ、コストを抑える設計となっています。これらのパラボラアンテナは、電波を集めて受信部に送る集光式の方式を採用しており、主にアフリカ大陸の数千キロメートル範囲にわたって、設置の効率性や解像度を考慮した渦巻状の配置で展開されます。

一方、低い周波数帯を観測するのは「Aperture arrays」と呼ばれるアンテナ群です。こちらはDishesとは異なり、むき出しの受信部で電波を直接受け取る非集光式の方式です。Aperture arraysはさらに低周波用と中周波用に分かれ、それぞれ異なる形状の受信機を持ちます。これらのアレイアンテナは、望遠鏡の中心部から比較的近い、概ね200キロメートル程度の範囲に設置されます。

建設地の選定と役割

SKAの建設地は、2012年にオーストラリアと南アフリカを中心とするアフリカ地域に決定されました。建設地候補の選定にあたっては、人工的な電波干渉が少ない静かな環境、安定した気候、広範囲にわたるアンテナ間の接続性、建設コストなどが重要な基準となりました。最終的に、両候補地の利点が同等と判断され、プロジェクトの規模を考慮して二つの地域に分けて建設されることになりました。

オーストラリア地域では、主に低周波帯を観測するAperture arraysが設置されます。中心地は西オーストラリア州のマーチソン電波天文台周辺です。この地域は人口密度が非常に低く、電波環境が良好であることが選定理由の一つです。建設地決定に先立ち、オーストラリアでは試験的な電波望遠鏡ASKAPが建設されており、これがSKAの新技術開発に貢献しています。

アフリカ地域では、主に中周波帯を観測するDishes（パラボラアンテナ）が設置されます。これには、南アフリカ共和国を中心に、周辺国にも展開される計画が含まれています。アフリカ地域でも、人口が少なく電波干渉が少ないこと、穏やかな気候であることなどが観測に適しています。南アフリカでは、建設地決定前にMeerKATと呼ばれる64基のパラボラアンテナ群が先行して建設・運用が開始されており、これがSKAシステムの一部として組み込まれる予定です。

当初、ニュージーランドも建設地候補に含まれていましたが、自国内への施設建設がなくなったことから、2020年末に参加を取りやめています。

科学的な探求

SKAプロジェクトの主要な科学目標として、以下の5つのテーマが設定されています。

宇宙における銀河の誕生と進化のプロセス、および宇宙の加速膨張に関わるダークエネルギーの性質解明。
高速で回転する中性子星であるパルサーや、ブラックホールの観測を通じたアインシュタインの一般相対性理論など、重力理論の検証。
宇宙全体に存在する磁場の起源や、それがどのように進化してきたかの探求。
太陽系外惑星（系外惑星）の周囲に存在する可能性のある生命体の痕跡や、その探査。
宇宙で最初に誕生した星や銀河がどのように形成されたか、宇宙の再電離時代の観測。

これらの壮大な科学目標の達成を目指し、SKAは宇宙の様々な側面をこれまでにない精度と感度で観測することを目指します。

計画の課題と進捗

SKA計画の遂行にあたっては、増え続ける人工衛星からの電波干渉への対策や、巨大プロジェクトゆえの建設資金の確保といった課題も抱えています。

SKA機構の本部は、イギリスのジョドレルバンク天文台近郊に設置され、プロジェクト全体の運営を担っています。計画は順調に進んでおり、2021年6月には参加各国が正式に建設開始を承認しました。本格的な建設は2022年に始まり、2027年からの科学観測開始を目指しています。

関連事項

アレン・テレスコープ・アレイ (Allen Telescope Array, ATA): アメリカ合衆国にある電波干渉計。SKAより規模は小さいが、同様の周波数帯を観測。
アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (ALMA): チリに建設された電波干渉計。SKAより周波数の高い電波を観測。
ジョドレル・バンク天文台: イギリスにある天文台。SKA機構の本部が設置されている。
* ブレイクスルー・リッスン (Breakthrough Listen): 地球外知的生命体探査プログラム。SKAとの連携が発表されている。

SKAは、人類が宇宙を理解するための新たな扉を開くことが期待される、画期的な巨大科学プロジェクトです。

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