ブレイクスルー・リッスン

ブレイクスルー・リッスンは、ブレイクスルー・イニシアチブの一環として、地球外知的生命体（SETI）の探索を目的としたプロジェクトです。2016年に開始され、10年間で1億ドルの予算を投じて、宇宙からの人工的な電波や光信号の検出を目指しています。このプロジェクトは、受動的なSETIアプローチを採用しており、地球外生命体が発する可能性のある通信信号を観測します。

観測方法

ブレイクスルー・リッスンでは、主に以下の観測方法を採用しています。

電波観測: グリーンバンク望遠鏡（北半球）とパークス望遠鏡（南半球）という、世界有数の電波望遠鏡を使用しています。これらの望遠鏡は、広範囲の周波数帯で電波を捉えることができ、宇宙からの微弱な信号を検出する能力に優れています。
可視光観測: 自動惑星検出望遠鏡を用いて、可視光の範囲での観測も行っています。これは、地球外生命体が使用する可能性のある、レーザーのようなパルス光信号を探索することを目的としています。

カリフォルニア大学バークレー校のBerkeley SETI Research Center (BSRC) がプロジェクトの運営を担っており、観測によって得られたすべてのデータは一般に公開されます。また、ブレイクスルー・イニシアチブでは、データの分析を支援するオープンソースソフトウェアの開発も進められています。さらに、分散コンピューティングプロジェクトのSETI@homeでは、アレシボ天文台のデータに加え、ブレイクスルー・リッスンのデータも解析に利用されました。

資金と提携

プロジェクトの運営資金は、実業家のユーリ・ミルナー氏からの1億ドルの寄付によって賄われています。この資金は、望遠鏡の利用料、新しい受信装置の開発、研究員の雇用などに充てられています。具体的な契約として、グリーンバンク望遠鏡を5年間で1000万ドル相当、パークス望遠鏡を5年間で25%の時間使用することが決定しています。

プロジェクトは開始当初から、世界中の主要な天文施設と提携関係を結んでいます。2016年には中国科学院国家天文台との間で、500メートル球面[[電波望遠鏡]]（FAST）のデータ共有に関する合意が発表されました。2017年にはジョドレルバンク天体物理学センター、2018年には南アフリカ電波天文台 (SARAO) のMeerKAT電波望遠鏡との提携が発表されました。2019年には、フレッドローレンスホイップル天文台 (FLWO) のVERITAS（超高エネルギー放射線イメージング望遠鏡アレイシステム）を用いた光学観測を開始しました。これらの連携により、プロジェクトはより広範囲の宇宙領域をカバーし、多様な観測手法を駆使した包括的な探索を可能にしています。

観測結果

2016年1月から2019年3月にかけての観測では、地球から163光年以内にある1327個の恒星を対象に、1.10〜3.45 GHzの周波数帯で電波信号の探索が行われました。しかし、その範囲内では、地球外生命体が発したと思われる明確な信号は検出されていません。この結果は、宇宙における知的生命体の存在の希少性を示唆するものではなく、継続的な探査の必要性を物語っています。

ブレイクスルー・リッスンは、地球外生命体の探索において重要な役割を果たしており、世界中の研究者や天文愛好家が注目しています。今後も継続的な観測とデータ解析を通じて、人類の宇宙観に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。

関連情報

ブレイクスルー・イニシアチブ: ブレイクスルー・リッスンを含む、宇宙探査や生命探査に関する一連のプロジェクト。
ブレークスルー・スターショット: 光速に近い速度で宇宙探査を行うためのプロジェクト。

外部リンク

* Breakthrough Listen (英語)

もう一度検索