スクリアビン国際ピアノコンクール

スクリアビン国際ピアノコンクール

スクリアビン国際ピアノコンクール（イタリア語名称：Concorso Pianistico Internazionale "Città di Grosseto" - Premio di Esecuzione Pianistica "A. Scriabin"）は、イタリア中部の都市グロッセートで継続的に開催されている国際的なピアノ演奏コンクールです。アレクサンドル・スクリアビンにちなんだ名称を持つこのコンクールは、スクリアビンの作品演奏に重きを置いていることが大きな特徴です。

歴史と概要

2002年に設立された本コンクールは、以来毎年欠かすことなく開催されており、新型コロナウイルスの世界的流行下においてもその開催を続けています。同名のコンクールがかつてモスクワで行われていましたが、そちらは2012年に終了しており、グロッセートのコンクールとは直接の関係はありません。また、2020年に中国の鼓浪嶼で開催されたコンクールも同様に本コンクールとは無関係です。

グロッセート市は近年、若手奏者を対象とした別のコンクール（Concorso Pianistico Giovanile “Città di Grosseto”）も開催していますが、これらは明確に異なるコンクールです。スクリアビン国際ピアノコンクールは2017年にAAF（Alink-Argerich Foundation）に加盟していますが、WFIMC（世界国際音楽コンクール連盟）には加盟していません。

コンクールの形式

本コンクールは通常、第一次予選、第二次予選、そして本選の三段階で行われます。

第一次予選: 約20分間の演奏で、スクリアビンの練習曲を少なくとも1曲含める必要があります。
第二次予選: 約45分間の演奏で、8分以上のスクリアビン作品を含めることが求められます。
* 本選: 一つのピアノ協奏曲のみを演奏します。設立当初から基本的なルールは変更されておらず、メンデルスゾーンの協奏曲がプログラムに追加された程度にとどまっています。

この形式は、他の国際コンクールで経験を積んだ演奏家にとって参加しやすい構造となっており、実際に多くの経験豊富な若手ピアニストが毎年挑戦しています。

参加者の水準と特徴

本コンクールは、参加しやすい形式でありながら、その演奏水準は極めて高いことで知られています。これまでに、ハエン国際ピアノコンクール、シューベルト国際ピアノコンクール、プレトリア国際ピアノコンクール、ソウル国際音楽コンクール、ヴィオッティ国際音楽コンクール、ルービンシュタイン国際ピアノコンクールといった権威あるコンクールで優勝経験を持つピアニストたちが数多く参加し、本コンクールでも優勝を果たしています。特に、女性奏者も参加しやすい門戸の広さがありますが、これまでの優勝者リストを見ると、その水準の高さゆえか女性の優勝者は少ないという傾向があります。

2024年の開催では、世界各地から97名の参加者がありました。特に東アジアおよびロシアからの参加が多く、日本、中国、韓国、ロシアの合計で76名が参加しました。本選には2名のロシア人奏者が進出し、非常にハイレベルな競争となりました。

運営と審査

本コンクールは、イタリアの高級ピアノメーカーであるFAZIOLIがスポンサーの一つとなっています。審査においては、過去のジュネーブ国際音楽コンクールなどと同様、審査員が最高位にふさわしい演奏がないと判断した場合、躊躇なく優勝者を「該当者無し」とすることがあります。これは、コンクールの厳格な評価基準と高い理想を示すものです。

継続的な開催、スクリアビン作品への深い追求、そして世界中から集まる高水準の参加者たちが、スクリアビン国際ピアノコンクールを国際音楽界における重要な位置づけとしています。

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