スコイネウス

スコイネウス（Σχοινεύς, Schoeneus）

古代ギリシャの伝承において、「スコイネウス」という名前は、少なくとも二人の異なる人物に帰せられています。それぞれのスコイネウスは、出自もたどった運命も全く異なっています。

アタマースの子スコイネウス

最初のスコイネウスは、ボイオーティア地方に位置する古代都市オルコメノスの支配者であったアタマース王と、その妻テミストーの間に生まれた息子として語られます。彼は、レウコーン、エリュトリオス、そしてプトーオスといった兄弟を持っていました。

このスコイネウスは子供を持ったとされており、通常はクリュメノスの父親とされています。しかし、もう一つの有名な説では、彼は並外れた足の速さと狩りの腕前で知られる女傑、アタランテーの父であるとも伝えられています。ただし、アタランテーの父親については様々な説が存在するため、スコイネウス説はその多くの可能性の一つとして位置づけられています。

また、このスコイネウスには地理的な結びつきも指摘されています。紀行家パウサニアースは、アルカディアー地方のメテュドリオン近郊に「スコイヌス」と呼ばれる土地があることに言及し、この地名がスコイネウスの名に由来すると推測しています。このことから、パウサニアースは、スコイネウスが生まれ故郷であるボイオーティア地方を離れ、遠く離れたアルカディアーへと移り住んだのではないかと示唆しています。さらに、ヒュギーヌスの記述によれば、このスコイネウスはアルカディアーにおいて王位に就いたとされています。

彼の物語は、家系図や子孫、そして彼にちなむとされる土地の存在を通じて伝えられており、特にアタランテーの系譜をたどる際に参照されることがあります。

アウトノオスの子スコイネウス

二人目のスコイネウスは、メラネウスの子であるアウトノオスと、その妻ヒッポダメイアの息子です。彼はエローディオス、アントス、アカントス、アカンティスという兄弟妹とともに暮らしていました。彼らの家族にまつわる悲劇的な出来事は、アントーニーヌス・リーベラーリスによって『ギリシア変身物語集』に記録されています。

この物語によれば、スコイネウスの兄弟であるアントスは、不幸にも一頭の馬によって命を落とすという悲劇に見舞われます。この突然の死は、父アウトノオス、母ヒッポダメイア、そしてスコイネウスを含む残された家族全員に計り知れないほどの悲しみをもたらしました。彼らはアントスの死を激しく、そして絶え間なく嘆き続けました。

家族の深い悲嘆の様子を見た大神ゼウスと、光明の神アポローンは、彼らを憐れみ、その苦しみから解放するために変身させることを決めました。父アウトノオスはヒゲナガムシクイに、母ヒッポダメイアはズキンガラスに姿を変えられました。そして、スコイネウス自身もまた、兄弟のエローディオス、アカントス、妹のアカンティスとともに、それぞれ異なる種類の鳥へと変えられたと伝えられています。ただし、アントスを殺した馬は、馬の姿のまま残されたとされています。この物語は、人間の深い悲しみが神の介入を引き起こし、劇的な変容をもたらすという、ギリシャ神話における典型的な変身譚の一つとして語り継がれています。

このように、「スコイネウス」という名前は、王家の血筋と土地の起源に結びつく人物と、家族と共に鳥に変身するという全く異なる運命をたどった人物という、対照的な伝承を持つ二人を指しています。これらの物語は、古代ギリシャ神話における名前の重複と、そこに織り込まれた多様な人間の営みや運命の描写を示しています。

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