スコット基地

スコット基地は、ニュージーランドが南極観測のために運用している重要な基地です。ロス島に位置し、南極点からは約1300kmの距離にあります。この基地の名称は、南極探検家として知られるロバート・スコットに由来します。

基地の設立と歴史

1953年、ニュージーランド南極協会が政府に対し基地建設を提言したことが始まりです。1956年から建設が開始され、1957年1月20日に公式に開館しました。設計は、ニュージーランド労務開発省の建築家、フランク・ポンダーが担当しました。

設立当初は、イギリスが主導する英国連邦横断南極調査（TAE）を支援する目的がありましたが、1956年から1959年の国際地球観測年（IGY）にも参加し、アメリカのマクマード基地と協力してヴィクトリアランドやハレット岬の調査を行いました。TAEとIGYプロジェクトが終了した後も、ニュージーランド政府は科学研究目的で基地を存続させることを決定しました。当初は短期観測基地としての設計でしたが、1976年には建て替えが行われ、より機能的な施設へと生まれ変わりました。

2005年には、2階建てのヒラリー・フィールドセンターが完成し、基地の面積は1,800平方メートルに拡大しました。このセンターは、ニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリーにちなんで名付けられ、開館時にはヒラリー自身も基地を訪れています。2007年には、基地開館50周年を記念する式典が開催されました。現在、基地の運営は1996年7月1日に設立された王立行政庁「アンタークティカ ニュージーランド」が行っています。

基地の設備と特徴

スコット基地には、1957年の建設当初から使用されている調査用の小屋が1棟2部屋残っています。1960年には格納庫が設置されました。建物は、深緑色の塗装が施された全天候型設計で、これはニュージーランドの自然地形をイメージしたものです。

基地内には風力発電所があり、電力の完全自給自足を目指しています。将来的には、近隣のマクマード基地への電力供給も計画されています。2010年1月には、3基の風力発電装置が設置され、運用を開始しました。

スコット基地には最大85名が滞在可能で、夏季には60〜65名の科学者や技術者が研究活動を行います。冬季は10〜15名程度が滞在します。かつては3箇所の観測所（バンダ湖観測所、ハレット岬観測所、バード岬観測小屋）が基地に所属していましたが、現在はバード岬観測小屋のみが稼働しており、環境保護のため夏季のみ開所しています。

物資や人員の輸送は、アンタークティカ ニュージーランドの要請に基づき、ニュージーランド空挺団第40飛行隊が担当します。第40飛行隊は、C-130H輸送機とボーイング757-200s航空機を保有し、アメリカの南極観測プログラムへの支援も行っています。夏季には平均6回の航空輸送が行われ、年間を通して20〜60回の人員輸送が実施されます。基地内で治療が困難な急病患者は、空路でクライストチャーチ病院へ搬送されます。船舶による輸送は、ニュージーランド海軍が担当しています。

基地内の掲示板には、南極点、クライストチャーチ、ケープタウン、ロンドンまでの距離が表示されています。過去の観測記録によると、最高気温は7.5℃（2002年1月）、最低気温は-57℃（1968年8月）、最大風速は196.5km/h（1972年4月）です。

研究施設

スコット基地には、以下の3つの研究室があります。

ウェット研究室 (Wet Lab): 海洋生物学研究や環境保全観測が行われ、海水供給設備を備えた水槽が設置されています。
サマー研究室 (Summer Lab): 静音環境が必要な研究や、持続的な観測を目的とした研究に利用されます。
* ハザートン研究室 (Hatherton Lab): 基地の中心的な研究室であり、長期観測が必要な研究に使われます。また、短期利用の実験室、コンピューター室、電気実験室も併設されています。

研究室の他に、宿舎、図書室、休憩室、娯楽室、食堂、売店、スポーツジム、サウナ/浴室、作業所、資材保管庫、駐車場などの施設も完備されています。

スコット基地は、ニュージーランドの南極観測における重要な拠点であり、多様な科学研究を支えています。

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