スコフィールド戦車

スコフィールド戦車：ニュージーランド独自の戦車開発の軌跡

第二次世界大戦下、ニュージーランドは日本の侵略という脅威に晒され、自国の防衛強化が急務となりました。しかし、イギリスからの戦車供給は困難を極め、ニュージーランドは独自の戦車開発に乗り出します。その結果生まれたのが、スコフィールド戦車です。

この戦車は、ゼネラルモーターズの技術者、E・J・スコフィールドの名に因んで命名されました。開発にあたっては、既存のシボレー製トラックの部品を多く流用し、コストと開発期間の短縮を図りました。エンジン、車輪、多くの機構部品はトラックと共通であり、履帯とサスペンションは当時ニュージーランドで生産が始まったばかりのユニバーサル・キャリアから転用されました。車体と砲塔の装甲板は、ニュージーランド鉄道のハルウォーリー工房が製作を担当しました。

スコフィールド戦車の最大の特徴は、履帯と車輪の両方で走行可能なハイブリッド構造です。道路走行時には車輪を使用し、不整地では履帯を使用することで、高い機動性を確保することを目指しました。履帯と車輪は共通の車軸を使用しており、車体内部のコントロールアームで切り替えられました。車輪走行時には、履帯はチェーンで持ち上げられ、車高を確保する工夫が凝らされていました。完全な履帯走行時には、車輪は取り外して車体側面に固定されました。最高速度は、車輪走行時で72km/h、履帯走行時で43km/hに達しました。

1940年8月、最初の試作車両が完成しました。しかし、設計上の欠陥により実地試験は失敗に終わります。乗員は3名で、運転手席前方に機銃手、砲塔後部に機銃手が配置される構成でした。この試作車は、イギリス、オーストラリア、アメリカの軍事専門家から厳しい評価を受けます。それでも、ニュージーランド政府は戦車開発を継続し、1942年には2台目の試作車両が完成しました。2台目は、スコフィールドの名を冠してはいるものの、設計者は前作とは別のチームが担当し、大幅な改良が加えられました。

2台目の試作車両では、履帯と車輪のハイブリッド構造は踏襲されましたが、武装は開放型の砲塔に40mm砲と7.92mmベサ機関銃を搭載し、戦闘能力が向上しました。この試作車は専門家から肯定的な評価を受けますが、時を同じくしてニュージーランドはイギリスとアメリカから十分な数の戦車を供与されるようになり、国産戦車の必要性は薄れていきました。

1943年半ば、評価のためイギリスに輸送されたスコフィールド戦車は、ロンドンでのパレードにも参加しました。戦車設計委員会による調査が行われましたが、開発継続は推奨されませんでした。その後、試作車両は倉庫に保管された後、第二次世界大戦終結後に廃棄されました。スコフィールド戦車は実戦配備には至りませんでしたが、限られた資源と技術の中で独自の戦車開発に挑んだニュージーランドの努力と、その技術的挑戦を示す貴重な遺産となっています。戦車開発の歴史において、ユニークな走行機構を持つスコフィールド戦車は、忘れ去られることのない存在として、今後も研究と議論の対象となるでしょう。

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