スジイルカ属

スジイルカ属 (Stenella)

スジイルカ属（学名：Stenella）は、海に暮らす哺乳類であるイルカの仲間であり、生物学的な分類において鯨偶蹄目（Cetartiodactyla）ハクジラ亜目（Odontoceti）に属するマイルカ科（Delphinidae）を構成する一つのグループです。この属に分類されるイルカたちは、世界の広範囲にわたる暖かい海域、具体的には熱帯から温帯にかけての海洋を主な生息地としています。

分類学上の位置づけ

スジイルカ属は、生物分類体系の中で以下のような位置づけにあります。

目: 鯨偶蹄目 (Cetartiodactyla)
亜目: ハクジラ亜目 (Odontoceti) - 歯を持つクジラやイルカのグループです。
科: マイルカ科 (Delphinidae) - 一般的に広く知られているイルカの多くがここに分類されます。
属: スジイルカ属 (Stenella)

このように、スジイルカ属は、多様な形態を持つ海生哺乳類の中でも、特に歯を持つイルカ類の大きなファミリーであるマイルカ科に属する、近縁なイルカたちをまとめた単位です。

構成種

現在、スジイルカ属には、以下の5つの種が分類学的に認められています。それぞれの種は、外見や行動、そして生息する海域において特徴的な違いを持っています。

1. マダライルカ
学名: Stenella attenuata
英名: Pantropical Spotted Dolphin
広範囲の熱帯海域に生息し、成長するにつれて体に特徴的な斑点模様が増えることが名前の由来となっています。

2. タイセイヨウマダライルカ
学名: Stenella frontalis
英名: Atlantic Spotted Dolphin
大西洋の温帯から熱帯にかけての海域で見られます。こちらも斑点模様が特徴ですが、マダライルカとは分布域や模様のパターンに違いがあります。

3. ハシナガイルカ
学名: Stenella longirostris
英名: Spinner Dolphin
世界の熱帯、亜熱帯、温帯の温暖な海に広く分布しています。長く細い吻（くちばし）を持ち、水面から高く飛び上がり、体を回転させる「スピン」行動で特に有名です。この行動が英名の由来となっています。

4. クライメンイルカ
学名: Stenella clymene
英名: Clymene Dolphin
主に大西洋の熱帯域に生息しています。形態的な特徴は、ハシナガイルカとスジイルカの中間的な要素を持つとされています。

5. スジイルカ
学名: Stenella coeruleoalba
英名: Striped Dolphin
* 熱帯から温帯にかけての広い海域に生息しています。体側に見られる鮮やかなストライプ（筋模様）が最大の特徴であり、和名および英名の由来となっています。学名の「coeruleoalba」も「青い（または灰青色）と白い」という意味で、この模様を指しています。

生態と生息環境

スジイルカ属のイルカたちは、総じて暖かい海域を好む傾向があります。彼らが主に発見されるのは、熱帯、亜熱帯、そして水温が比較的高い温帯の海です。これらの海域は、彼らの主要な餌資源である小型の魚類や頭足類（イカやタコなど）が豊富に生息している環境であり、生活を営む上で適しています。

マイルカ科に属する多くのイルカと同様に、スジイルカ属の種も社会性が高く、しばしば大きな群れを形成して行動することが知られています。活発な泳ぎや、ジャンプ、ボウライディング（船首波に乗る行動）など、水面での様々な行動を観察することができます。

本稿で取り上げたスジイルカ属は、特定の分類上の位置づけと温暖な海域への適応という共通点を持ちつつ、属内の各々が独自の形態や生態的特徴を発達させています。イルカ全般に関するより詳細な情報については、「イルカ」の項目も参照されることをお勧めします。

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