スズキ・アヴェニス

スズキ アヴェニス：都市を駆け抜けた個性派スクーターの軌跡

スズキのアヴェニスは、街路を軽快に走ることをコンセプトに開発されたスクータータイプのオートバイです。その車名は「アベニュー」と「ストリート」を組み合わせたもので、都市の道路を自在に走り抜けるイメージが込められています。

1998年のデビュー以来、アヴェニスは独特の存在感を放っていました。搭載された水冷4ストロークSOHC単気筒エンジンは、同時代の2ストロークエンジンと比較してパワフルな走りを実現。125ccと150ccの2つの排気量モデルがラインナップされ、125ccモデルは最高出力14馬力、150ccモデルは最高出力16馬力を誇りました。

スタイリングは、当時としては斬新なヨーロピアンテイストが特徴でした。前後12インチホイールや低く構えられたフロントカウルは、洗練された雰囲気を演出。しかし、この個性的なデザインと大柄な車体、そしてフラットではないステップボードなどが、一部ユーザーからは使い勝手の面で評価が分かれる要因となりました。

さらに、車両価格の高さが販売の足かせとなった側面も否めません。当時、競合他社からより手頃な価格のモデルが数多く発売されていたため、アヴェニスは市場で苦戦を強いられることになります。アドレス110など、同時期に販売されていたスズキの他のスクーターと比較しても、アヴェニスの販売実績は低迷しました。

そして、2007年には、アヴェニスは生産終了という決断を迎えました。その背景には、その後台頭してきたビッグスクーターブームの影響も考えられます。より大排気量で快適な走行性を提供するビッグスクーターの人気が高まる中で、アヴェニスは市場における競争力を維持することが難しくなったと言えるでしょう。

興味深いことに、川崎重工業汎用機カンパニー（現：カワサキモータース）は、スズキからアヴェニス150のOEM供給を受け、「エプシロン150」として販売していました。しかし、このOEM提携も解消となり、エプシロン150も市場から姿を消すことになります。

しかし、アヴェニスの歴史はそこで終わらなかったのです。2022年10月、アヴェニス125として、日本市場に再びその姿を現しました。今回は、インドを始めとする世界各国で販売されるグローバルモデルとして投入されており、かつての個性派スクーターが新たな進化を遂げています。

アヴェニスは、成功と挫折を経験しながらも、独自のスタイルと性能でオートバイ史に一ページを刻んだモデルと言えるでしょう。その独特のデザインとパワフルなエンジンは、多くのライダーに強い印象を残し、復活を待ち望んでいたファンも多いはずです。今回の再投入は、アヴェニスという名前が持つブランド力と、その潜在的な人気を示すものと言えるのではないでしょうか。今後のアヴェニスの活躍に期待したいところです。

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