スズキ・セピア

スズキ・セピアシリーズ：メットインスクーターの先駆け

スズキが1989年から1999年にかけて製造・販売していたセピアは、同社のスクーターラインナップにおいて重要な位置を占めるモデルです。アドレスシリーズの下位モデルとして登場したセピアは、コンパクトな車体ながら、当時としては画期的なメットイン機能を搭載。その利便性と手頃な価格から、多くのユーザーに支持され人気を博しました。その後のレッツシリーズへと受け継がれる技術やデザイン思想は、セピアシリーズの成功によって培われたものと言えるでしょう。

セピア誕生とその魅力

1989年4月、セピア（AF50）が発売されました。この時代、メットイン機能は一部のスクーターにしか採用されておらず、セピアはアドレスよりもコンパクトで低価格なメットインスクーターとして市場に投入されました。その戦略は成功し、セピアは瞬く間に人気モデルの仲間入りを果たします。CMキャラクターには井森美幸さんを起用するなど、積極的なマーケティングも奏功しました。当時の価格は129,000円と、非常に手が届きやすい価格設定だったことも人気の要因の一つでしょう。

セピアの特徴は、なんと言ってもそのコンパクトなボディと、大容量のメットインスペースです。ヘルメットはもちろん、それ以外にも様々な物が収納可能で、使い勝手の良さがユーザーに好評でした。シート下スペースには内張りや照明も設置され、使いやすさを追求した設計がなされていました。また、シートを開けることなく給油できるフューエルリッドも装備。細かい配慮が随所に感じられる一台でした。ボディ構造は、シート下スペース周辺は強度と剛性を保つ板金モノコック、その他はパイプフレームを併用するハイブリッド構造でした。シート高も低く抑えられており（675mm）、女性や体格の小さな方でも乗りやすい設計となっていました。最高出力は6.8PS/7000rpm。年間販売目標台数は10万台という、スズキの期待の高さがうかがえます。

スポーツモデル「セピアZZ」の登場

セピアの成功を受け、1990年3月にはスポーツモデルであるセピアZZ（AF50）が発売されました。セピアZZは、最高出力を0.2PS向上させた7.0PSエンジンを搭載。さらに、ボトムリンク式フロントフォークやフロントディスクブレーキを採用することで、走行性能を大幅に向上させています。当時としては斬新なハイマウントストップランプも採用（初期モデルはリアスポイラーのみ）。ハイグリップタイプの偏平チューブレスタイヤやチャンバータイプマフラーなども、スポーティな走りを演出する装備として注目を集めました。発売当時の価格は146,000円。セピアのスポーティな魅力を求めるユーザーを惹きつけました。1992年にはマイナーチェンジを行い、外装デザインを一新。この時のライト周辺部品は、後のレッツIIにも使用されるなど、技術的な共通性も見て取れます。AF50は、1993年にAJ50セピアが発売された後も併売され続けたほどの人気ぶりでした。

新世代セピア：Newセピア、セピアRS、セピアZZ

1993年1月には、Newセピアシリーズが登場します。このシリーズでは、標準モデルのNewセピアに加え、フロントディスクブレーキ搭載のセピアRS、そしてスポーツモデルのセピアZZの3種類がラインナップされました。特にセピアZZは、最高出力が自主規制上限値の7.2PSに達し、パワー競争を加速させる存在となりました。Newセピアシリーズでは、新設計のエアロフォルム、標準装備のフロントラック、4.2Lにアップした燃料タンク容量、プラグ整備用のメンテナンスリッドなど、使い勝手とデザイン性を両立した改良が施されています。また、セピアZZにはエンジン始動と同時に点灯するフェンダーマーカーが装備されるなど、細部にもこだわりが感じられます。1994年には、3000台限定でラッキーストライクカラーのセピアZZが発売されるなど、話題性を演出する企画も展開されました。

セピアシリーズの遺産

セピアシリーズは1999年に生産を終了しますが、その後のスズキのスクーター開発に大きな影響を与えました。特にメットイン機能や、扱いやすい車体設計などは、後のレッツシリーズを始めとする多くのモデルに受け継がれています。2000年に発売されたZZは、セピアの名前を外し新たなスタートを切りましたが、セピアシリーズの技術やデザイン思想は、スズキのスクーターの歴史に深く刻まれています。セピアという名前は、かつて一世を風靡した人気スクーターとして、多くのユーザーの記憶に今も鮮やかに残っていることでしょう。

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