スズキ・マローダー

スズキ・マローダーシリーズ：力強い名前と個性的な走りのアメリカンクルーザー

スズキがかつて製造販売していた「マローダー」シリーズは、力強いネーミングと個性的なスタイルが特徴的なアメリカンクルーザーです。英語で「略奪者」を意味するMarauderの名が示す通り、同社の「イントルーダー」や「デスペラード」といったモデルと共通する、ワイルドでたくましいイメージを強く打ち出していました。

本記事では、マローダーシリーズの中でも特に人気を集めた250ccと125ccモデルを中心に、その魅力と歴史を詳しく解説します。

マローダー250：気軽に楽しめるアメリカン入門モデル

1998年に登場したマローダー250（GZ250）は、250ccクラスのアメリカンバイクとして、当時流行していた本格志向のモデルとは一線を画す存在でした。既存のロードモデルをベースに開発されたため、専用設計モデルに比べると本格的なアメリカンバイクとしての要素は控えめでしたが、その分、手軽な価格と扱いやすさで多くのライダーに親しまれました。

デザインはシンプルながら上品で、単気筒エンジンによる軽快な走りも魅力。最高出力は20psと控えめではありましたが、トルク特性に優れており、街乗りからツーリングまで、幅広いシーンで快適なライディングを提供しました。30万円台という低価格も大きな魅力で、当時としては驚異的なコストパフォーマンスを実現していました。

しかし、その独特のコンセプトゆえに市場のニーズを捉えきれず、日本国内での販売は低迷。2000年代初頭に生産が終了しました。現在では中古市場でも希少な存在となっていますが、海外、特に欧州や北米市場では高い人気を誇り、ロングセラーモデルとして長期間に渡り販売が続けられました。

エンジンのベースは、ボルティーにも搭載されていた信頼性の高い空冷単気筒エンジンです。フレームや足回りなど、多くのパーツをボルティーと共有しており、整備性にも優れていました。大容量燃料タンク（14L）と優れた燃費性能により、長距離走行も可能です。

100km/hを超える速度域では振動が大きくなるため、高速道路での長距離移動にはやや不向きですが、街中やワインディングロードでの走行は非常に快適で、アメリカンバイク入門者にも最適な一台でした。

マローダー125：小柄ながらも存在感のあるアメリカン

マローダー125（GZ125）は、1998年に登場した125ccモデル。マローダー250とほぼ同じ車体設計で、125ccクラスとしては大柄なサイズが特徴でした。エンジンはGN125と同じ124cc空冷単気筒エンジンを搭載し、最高出力は12ps。マローダー250と比較するとパワーは控えめですが、125ccクラスならではの優れた燃費性能と、大容量燃料タンクによるロングツーリング性能を備えていました。

日本国内での販売は、250ccモデルと同様に低迷し、早々に販売終了となりました。しかし、欧州市場では好調な販売を続け、2000年代半ばには排ガス規制への対応のため、燃料噴射システムが採用されました。

中国で販売されていた「スズキ・GZ125」は、名称こそ同じですが、マローダー125とは全く別の車種である点に注意が必要です。

その他のマローダーシリーズ

マローダーシリーズには、日本国外専用モデルとして、800cc（VZ800）と1600cc（VZ1600）モデルも存在しました。800ccモデルはデスペラード800の海外仕様であり、1600ccモデルはカワサキ・バルカン1600ミーンストリークのOEM車種でした。これらのモデルは、いずれもブルバードシリーズへのブランド統合に伴い、生産終了となりました。

まとめ

スズキ・マローダーシリーズは、その個性的なスタイルと優れたコストパフォーマンスで、多くのライダーに愛されたアメリカンクルーザーでした。特に250ccと125ccモデルは、アメリカンバイク入門者にとって魅力的な選択肢であり、現在でも中古市場で高い人気を誇っています。その存在感は、多くのバイクファンに忘れ去られることなく、語り継がれることでしょう。

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