スズキ・MRワゴン

スズキ MRワゴン：軽トールワゴン史に名を刻む一台

スズキがかつて生産・販売していた軽トールワゴン、MRワゴン。その歴史は1999年の東京モーターショーで発表されたコンセプトカーにまで遡ります。ミッドシップエンジン・リアドライブレイアウトを特徴としたこのコンセプトカーは、その車名からMRワゴンの開発の端緒となりました。しかし、市販モデルではFFレイアウトに変更され、車名は「マジカルリラックス」の略称となりました。

初代モデル（MF21S型）：2001年-2006年

初代MRワゴンは、軽自動車規格の限界寸法を活かしたパッケージングとスタイリッシュなデザインが特徴でした。トヨタ・エスティマを彷彿とさせるモノフォルムデザインは、当時としては斬新なスタイルでした。エンジンは自然吸気とターボの2種類、トランスミッションは4ATのみの設定で、グレード展開はE、X、Xナビパッケージ、ターボTの4種類でした。

安全装備にも力を入れており、全グレードにSRSエアバッグ、シートベルトプリテンショナー、フォースリミッターを標準装備。特にフォースリミッターは軽自動車初となる可変式を採用していました。また、後席シートは左右独立して前後スライドする機構を採用し、使い勝手の良さを追求していました。

販売期間中には、ミキハウスとのコラボレーションモデルや、スポーティなエアロパーツを装着した特別仕様車など、様々なバリエーションが展開されました。更には、燃料電池自動車の試作車「MRワゴンFCV」も開発され、環境性能にも配慮していました。

2代目モデル（MF22S型）：2006年-2011年

2代目では「ママワゴン」をコンセプトに、女性や子供をターゲットとした設計がなされました。キーレススタートシステムやフルオートエアコンなど、装備の充実が図られた他、インパネシフトの採用で操作性も向上しました。グレード体系はG、X、Tの3種類に整理され、シンプルながらも充実した装備が特徴でした。

派生モデルとして「MRワゴンWit」が登場。スポーティなエアロパーツや専用装備が追加され、より個性的なスタイルが提供されました。Witは、かつてスズキが生産していた小型車「フロンテ」にも存在したグレード名でした。

3代目モデル（MF33S型）：2011年-2016年

3代目では、ターゲット層を若い男女へとシフト。低燃費、広い室内空間、個性的なデザインを追求したモデルとなりました。ホイールベースを拡大することで、ワゴンRやパレットよりも広い室内空間を実現しました。

スタイリングは、丸みを帯びたフォルムと、半円モチーフのヘッドランプが特徴。Aピラーの角度を変更することで、前席の開放感を向上させています。また、標準装備のオーディオは静電容量式タッチパネルを採用。さらに、インパネに配置された多様な小物入れや、フラットに展開できるリアシートなど、使い勝手の良さも追求しました。

エンジンは新開発のR06A型を採用。自然吸気エンジンには軽自動車初となる吸排気VVT機構を搭載し、環境性能と動力性能の両立を図りました。ターボ車には吸気VVT機構付きターボエンジンを採用。また、軽量化と副変速機構付きCVTの採用により、優れた燃費性能を実現しました。

2013年には、Witが上級グレードとして復活。エアロパーツは廃止され、上質でスタイリッシュな仕様となりました。販売期間中、CMキャラクターであるミイのぬいぐるみ「ミイぐるみ」が成約者に進呈されるキャンペーンも実施されました。

海外展開

MRワゴンは、インドやインドネシアでも販売されました。インドでは「ゼン・エスティロ」、インドネシアでは「カリムン・エスティロ」として販売され、現地仕様に合わせてエンジンやトランスミッションなどが変更されました。

販売終了

2016年に生産終了、その後在庫販売を経て、MRワゴンは販売を終了しました。17年にわたる歴史に幕を閉じ、後継車種は登場しませんでした。

まとめ

MRワゴンは、コンセプトカーから市販モデルへと進化を遂げ、個性的なデザイン、優れた実用性、高い環境性能で多くのユーザーを魅了しました。軽自動車市場において、重要な役割を担った一台と言えるでしょう。

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